折原家の愛しい妹
□少女舞艶
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「えりかっちー」
「名無ーっ!待ってたよー!」
名無は池袋に来ていた。
以前約束していた狩沢達との約束を果たす為だ。
本日も池袋は平和。
ただ行き交う人の中に黄色のバンダナをしている人が増えたぐらいだ。
「今日ゆまゆまは?」
いつも狩沢と行動をする遊馬崎ウォーカーがいないことに名無は首を傾げた。
「ゆまっちはメイド喫茶で待ってるよー」
そう言いながら名無の手を握る。
よほど気分がいいのか、狩沢は鼻歌混じりでコスプレの魅力について語り始めた。
「今日はコスプレ喫茶に勤めてる知り合いに無理言って頼んで名無っちにそこの可愛いメイド服を着せてあげようと思って!」
メイド服と聞いて名無はパァっと顔を明るくした。
そもそもコスプレというのをしてみたいと思っていた名無は王道中の王道、メイド服を着てみたかったのだ。
人生で一度あるか無いかのい貴重な経験。
名無まで気分をよくした。
「楽しみ!ねぇねぇ。そこのメイド服可愛い?」
「もちろんだよー!池袋で1位、2位は争う名店だよ。それに名無っちが着たら最強の組み合わせに決まってるよー」
池袋の街を軽快な足取りで歩く二人。
10分ほど歩いたところであるメイド喫茶に着いた。
「ゆまゆまだぁ!」
「やっと来たんすかー、狩沢さ……わっ!!お、俺今リア充っす!!」
飛んできた名無を両手で包むのは遊馬崎だった。
頬を染めながら名無の顔をまじまじ見つめる。
「ゆまゆま!今日はメイド服着れるんだよね?」
「そうっすよー!店長に狩沢さんが頼み込んでましたからねー」
狩沢と遊馬崎に連れられ、名無は人生初のメイド喫茶に入った。
店の中はピンク、ピンク、ピンク。
「いらっしゃいませ。お待ちしてましたよ」
本来ならばメイドさんがお迎えするのだが今日はコスプレをしてメイドとして働くため店長がお出迎えをしたのだ。
「うん。予想以上の人材ですね」
名無を足元から頭まで見る。
そして満足げな表情を浮かべると、名無を裏の事務室に案内した。
「これを着てね。着たら今日は狩沢さん達のところにいればいいから」
店長はそれだけ言い残すと、可愛らしい声が響くホールに消えていった。
「…………可愛い」
「お兄ちゃんに見せたいな」と小さく呟く名無はヒラヒラのメイド服に袖を通した。