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□愛奏罪歌
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From:お兄ちゃん
sub:ご飯
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今日の晩ご飯は寿司だよ。
学校が終わったら
露西亜寿司にいてね。
―END
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兄からのメールに名無は瞳を輝かせた。
そしてパタンと携帯を閉じ、鼻歌混じりに歩き出す。
「名無さん。どうしたの?」
隣にいた帝人は急に機嫌の良くなった名無に首を傾げる。
それは少し後ろを歩いていた杏里もだ。
「んー?今日の晩ご飯はお兄ちゃんと露西亜寿司なんだ♪」
「そうなんだ」と笑顔で答える帝人に対し、杏里は不安そうに眉を寄せる。
「お兄ちゃんトロしか食べないから…今日はちゃんと食べさせなきゃ」
そう言う名無の表情はすごく楽しそうで、帝人は思わず頬を緩めてしまった。
「あの……私…今日はこれで……」
交差点に差し掛かり、杏里は帝人と名無に頭を下げる。
「うん!また明日ねっ」
「また明日」
「はい」
小さく微笑んだ杏里は二人に背を向け歩きだした。
「………やっぱり…誤解…なのかな…?」
小さく呟いた杏里は罪歌の子供に言われた言葉を思い出した。
『裏で糸を引いていた男の名は…折原臨也です、母さん』
そう言われて1番に思ったのは、その事件に名無が関わっていたのかどうかだった。
名無と臨也は仲がいい。
兄に死ねと言われたら間違えなく死ぬタイプだろう。
では、その兄が『切り裂き事件を意図的に起こす』と伝えた時、妹はどんな行動を取るのだろうか。
考えただけで杏里の身体は震える。
「私がなんとかしなくちゃ……」
罪歌は私。
切り裂き魔の事件も……私が原因のようなものなのだから。
杏里がそう決意し、落とした視線を上げた瞬間だった。
「!」
数メートル先の人混みの中、口角を上げた折原臨也がこちらを見つめていた。
「あっ………」
声を発しようとした瞬間人にぶつかり、視線が逸れる。
次に見た時、折原臨也はいなかった。
忽然と…霧のように。