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□思考停止
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「ところで正臣くん。帝人くんは元気かい?」
「は…?」
あまりにも唐突な質問に、俺は目を丸くしてしまった。
「ほら、去年の春に紹介してくれたじゃないか。君の友達、竜ヶ峰帝人くんだよ」
「なんで今帝人の名前が出てくるんすか」
何故。どうして。
俺は今、ダラーズの話をしに来たんだ。
なのにどうして親友の名が出てくる?
どうして俺の目の前にいる奴は笑っているんだ?
「いや、ほら。彼なんかも今の君の状況を見て心配してるんじゃないかなって」
「あいつは関係ないですよ。黄巾族の話もしてないですし、毎日平和に……」
「そうか、毎日平和に生活してるわけか。君がこんなに苦しんでいるのにねぇ」
聞きたくない。
これ以上この話を聞きたくなんかないのに、折原臨也の口は止まることなく動く。
「あいつは…関係ないっすから」
「関係あるとしたら?」
ぞわっと背中に冷たい何かが伝ったのが分かった。
僅かな動揺も、こいつは見逃さず牙を立てる。
「ちょっと待ってください…どういうことっすか…臨也さん……」
否定してほしくて尋ねた。
俺が思っていることが真実ではないと…否定してほしくて…。
「解ってるくせに」
歪んだ笑顔の臨也はいつものように正臣の思いを裏切った。
「ダラーズのボスは、君の大事な大事な大親友――竜ヶ峰帝人くんだよ」
全ての思考が……一瞬にして停止した。
「もっとも、親友と思ってるのは君だけかもしれないけどねぇ」
いつも言われる非難や皮肉より……
1番心をえぐる言葉だった。