はらりと落ちる花

□池田屋事件の悲劇
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初めての千鶴ちゃんの外出は僕、沖田総司が率いる一番組との巡察同行だった。

久々に外に出た千鶴ちゃんは瞳をキラキラと輝かせて町並みを見て回る。





「千鶴ちゃん。あんまりはしゃぎ過ぎないようにね」

「あ、はい!すみません……嬉しくってつい…」





まぁ…分からなくはないけどね。
美咲さんに怒られてから土方さんがようやく出してくれた外出許可。
喜ぶなというほうが無理がある。





「まぁ今は祇園祭も近いしね。町も浮足立ってるよ。ただこういう時って何があるか分からないから、僕からあまり離れないようにね」

「はい!」





本当に分かってるんだか……。
あんな眩しい笑顔を向けられたらあまり強くは言えなくなる。

どうやら千鶴ちゃんは美咲さんにどこか似ているらしい。





「僕の目の届く範囲ならお父さんの事聞いて回っていいから、一言声を掛けてね」





僕がそう言うと千鶴ちゃんは早速情報収集に走り出した。

一生懸命な子は嫌いじゃないし、お父さんを探すのに必死なあの子を見てたら…なんだか応援したくなって、いつもより長めの巡察をした。





そんな時、





「あぁ。そんな人ならあそこにある桝屋で見かけたよ」

「本当ですか!?」






その桝屋……というのが少し厄介だった。
あそこは長州側の間者がいる店。
新選組の密偵である山崎くんと島田さんが動きを探っているのだ。





「千鶴ちゃ………!」





僕が千鶴ちゃんを止めようとしたのと同時、同行している隊士の怒号が響いた。





「貴様ら浪人か!?主取りなら藩名を答えろ!!」





あぁ……まったく。
最悪だよ。

急いで浪人達の所へ行き、僕が名乗ると浪人達はそそくさといなくなった。

有名になった…という点では誇っていいのかもしれないけど、あんな顔されて逃げられるのってあまりいい気はしないなぁ。





「ほら、今から古高俊太郎のいる桝屋にご用改めしに行くよ」

「は?組長、あそこは確か……」

「うん、分かってる。ただ緊急事態なんだよね」





とにかくついて来るように言うと、隊士皆が急いで僕の後に続いた。





「きゃぁぁあぁ!!」

「!!」





予想通り、千鶴ちゃんは今にも刀で斬られそうになっている瞬間だった。

慌ててその場に飛び込み、振り上げられた刀を刀で押し払った。





「沖田さん……っ…!」

「君って運が悪いよね。ある意味こいつらも僕も……だけど」





突然始まった斬り合いに千鶴ちゃんは座り込んだまま目を閉じていた。

こっちの身にもなってよ…と言いたいところだが、こうなってしまったからには仕方ない。

僕は長州側の間者である古高を捕縛し、新選組の屯所へ戻った。




 
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