短編とリクエスト

□褒美愛形
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いつになく平和な日常は、
いつになく退屈な一日。
その退屈を埋めるには、やはり彼女しかいない。





「ねぇ無無?」

「ん?」





キッチンで晩御飯の準備をしながら、パソコン画面を見つめている無無。
どうやら昨日請けた仕事の資料をまとめているらしい。





「暇」

「私は暇じゃないよ?」





……まぁ確かに。
そう言われてしまうとその先何も言えなくなってしまう。





「あ。私このあと出掛けるね」

「どこに?」

「……………」





答えない無無をじっと見つめる。
しかし視線を反らされはぐらかされた。





「まさかとは思うけど……シズちゃんじゃないよね?」

「………………」





あーあ。
大当りじゃないか、ムカつく。

愛用の椅子から立ち上がり、真っ直ぐ無無の所へ。
キッチンまで行くと無無は身構えた。




「な、何よ!私行くんだからね!」





お玉を持ち、ピンクのエプロンをした無無。
思わずムラm………いや、ちょっとした出来心で無無を壁に追い詰めた。





「シズちゃんとねぇ…?別に構わないけど?」

「え?いいの?」





必然的に俺を見上げるような体制になる無無に心臓がトクンと跳ねる。

すっかり油断しきってる姿は甘美なものだ。





「もちろん。…………俺を振りほどけたら…ね?」

「え?どういう意………んっ…//」





手首を掴み、壁に押しやると噛み付くように唇に吸い付いた。
驚いた拍子に開いた口に舌を滑り込ませる。





「ん…ぅ…お…兄ちゃん……っ…//」





甘く、甘く――――
逃げることなんか出来ないキス。





「どう?まだ行くなんて言うの?」

「………っ………断ります…」

「いい子だねぇ。そんな君にはご褒美だ」





独占欲は止まらない。
君は俺だけ見てればいいんだよ。





チュッとわざと大きくリップ音を立てると無無は真っ赤になりながら食事作りを再開した。









(ごめんね、静雄さん。行けなくなっちゃった)

(それは構わねぇけど……なんかあったか?)

(え//!?べ、別に……)

(シズちゃんには関係ないよ♪)

(いーざぁぁやぁあああ!!てめぇの声を耳元で聞いちまった!!今すぐ殴らせろ!殺されろ!!)

(あっははー☆ばいばーい☆)




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