短編とリクエスト

□世界閉鎖
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今日が何日なのか。
今が何時なのか。
私にはもう分からない。

暗く閉ざされた部屋。
窓ひとつない部屋。
でも生活必需品は全て揃っている。

食事だってちゃんとしたものが出る。
監禁にありがちな『抱かれる』という行為だって毎日、嫌というほどでもない。

そう。
彼、折原臨也は優し過ぎるのだ。





「食事の時間だよ」





部屋にいつものバランスの揃った食事が出される。
肉、野菜、魚とメニューはいつもバラバラ。





「ありがとう…ございます…」

「あはは。言っただろ?敬語じゃなくていいって」





私に優しくキスをすると、これもいつものように臨也は私が食事を食べ終わるまで見てる。





「あの臨也さ……じゃなくて、臨也。私…外に出たい…」





足に繋がれた鎖はこの部屋から出ることを許してくれない。

臨也がにこりと笑うと、予想外の返事が返ってきた。





「外はまだ駄目。でも家の中だったらどこに行ってもいいよ。鎖は今日限りで取ってあげる」





食事を食べ終わると、私は初めて鎖から解放された。
重かった足が羽のように軽くなる。





「ぅ…あ……」

「おっと。まだよろけるねぇ。支えるよ」





臨也に掴まり、初めて部屋を出た。





「あら。やっと出してあげる気になったのね」

「まぁね」





外の世界は私の知る平和な世界が広がっていた。

空は青く、大きな窓から差し込む光に目眩がする。
それでも涙が出るほど綺麗だった。





「どうだい?外の景色は」

「素敵です……3年ぶりですから」





出たい、出たい、出たい。
そんな衝動に駆られる。





「君は3年あの部屋で耐えたんだ。あと3年経ったら……外に出してあげるよ」

「……………はい」





これを希望と思えばいいのか、絶望と思えばいいのか。
何故、折原臨也は私を閉じ込めるんだろうか。





「それじゃぁ今日は晩御飯にデザートを付けてあげるよ。君にとっての大きな前進に乾杯してね」





噛み付くようなキスに私は刃向かうことも出来ず、
今日もまた……世界は優しく閉ざされる。


 
 

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