短編とリクエスト
□聴声不届
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「ねぇ、無無。今日もシズちゃんと遊んできてあげたよ」
遊んであげたって……。
静雄さん、怒ってませんでした?
「そりゃもう怒ってたよ。自販機とか電柱投げられたからねぇ」
ふふ。
元気そうで何よりです。
臨也さんは?お身体は大切にしないと。
「その言葉そのまま君に返すよ」
私は大丈夫です。
臨也さんがいつも来てくれるんですから。
「ふーん。可愛いこと言うんだね」
たまには甘えてみようかと思って。
私……あとどれぐらい生きられるか分かりませんし…。
「俺が死ぬまで…だよ。君は俺に悲しい思いをさせちゃいけないんだ。だから俺が死ぬまでは生きるんだよ」
臨也さんが死んだら……私だって悲しいです。
「…ならさ、どちらかが死んじゃう時は…………」
二人で一緒に………いなくなっちゃおうか…?
♀♂
「何してるのよ」
病院のベンチで私の上司に当たる折原臨也は眠っていた。
確かここは臨也が執着していた女とよく会っていた場所。
「しっかりしなさいよ」
無無はもういない。
死んだのだ。
もともと病弱な彼女は小さい頃から闘病生活だったという。
臨也がどんな経緯で彼女と出会い、惹かれたのかは分からない。
でも…………
「また痩せたわね」
眠る臨也の身体にいつものように自分のカーディガンを掛けた。
らしくない行為だと思っているがどうも最近、臨也は『死が近い』ような気がする。
毎日有り得ないほどの量の仕事をこなし、ふらふらと外へ出ては必ずこのベンチで眠っている。
食事はこの数週間食べているところを見ていない。
「そんなに早く逝きたいのね」
なら私は何もせず彼の意志を尊重するだけ。
「さよなら、折原臨也」
病院のベンチ。
それは彼女との思い出の場所。
この場所でなら、彼女に会える気がして
いつも目を閉じる。
目が覚めた時、現実が深く胸に突き刺さって苦しくなる。
ならいっそのこと………そう思った。
目が覚めた時、目の前にあの笑顔がある場所へ。
神様を今なら……信じられる気がするから。
end...