短編とリクエスト

□闇切前進
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進む、進む。
池袋の路地を刀を持って走るのは制服を着た女と目の赤いサバイバルナイフを持った男。
派手な金属音が路地裏で響く。





「…っ…!!罪歌…!」

「強い…人……静雄と……無無…愛する…愛してあげる……」





ナイフを刀で弾き、宙を舞う。
壁を伝って男の背後へ回り込み刀を振り下ろした。

……が、男は元から運動神経がいいのだろう。
振り向きながら鳩尾に蹴りを入れられた。





「…っ……ぐ…!?うあ゙ぁっ!!」





思い切り吹き飛び、路地の壁に叩き付けられる。





「…ぅ………ぐ……!」





蹴られた腹を押さえ、ふらりと立ち上がる。
『仕事中』だというのにツイてない。
無無は刀を構え直す。





「愛してるわ……無無。…私とひとつになりましょ…?」

「………っ気持ちの悪いこと言うなぁあぁっ!!」





思い切り地面を蹴り、一瞬で男の懐に入り込み刀を振った。

一切容赦無く斬り付けた男の身体からは血飛沫が上がり、バタリと倒れ動かなくなる。





「………っはぁ……っはぁ…」





刀に付いた血を振り払い、鞘に納める。





「やぁ。相変わらず荒々しいねぇ」

「…っ…臨也……やっぱりお前か…」





咳をしながら睨む先には情報屋、折原臨也がいた。
口元を歪ませた臨也は愉快そうな表情で無無を見つめている。





「お前はいつも……私の邪魔をするっ…」





壁に背を預け座り込む。
近くまで寄って来た臨也は地面に置いた刀を拾い上げ、まじまじと見つめる。





「よくやるねぇ。今時刀ひとつで戦うなんてさぁ」

「………っはぁ……るさい…よ…」





鞘から刀を抜いた臨也はおもむろに無無に刃先を向けた。
喉元に向けられた刀に無無は目を細める。





「なんの…つもり…だ…」

「いや?どんな顔をするか見てみたかっただけだよ」





すっと喉元に傷を付けられる。
そして同じ目線になるよう屈んだ臨也は無無の右頬を優しく撫でた。





「君は決して恐怖に歪まない。つまらないなぁ……」

「……なんだ…っ…?予想外な行動を取ったりするから……面白いんだろ…?人間は」

「うん、そうだねぇ。ただ……これは俺の個人的な趣味だよ。君の恐怖に歪む顔が見たいだけ」

「なら無駄だn………んっ……」





突然のキスに無無は目を見開く。
驚いたと同時に開いた口に舌を滑り込ませた。





「んぅ……やめっ……」

「…ん………そうだね…やめようか…っ…!」

「……うぁ゙……っ…!?」





鋭い痛みに無無は顔を歪めた。
痛みを感じたほうに視線を送ると、腹部には自身の刀が刺さっている。





「い……っざや……!!」

「ふぅん?そんな顔出来るんだ。可愛いよ」





溢れ出す血を止める術などない。
臨也は刺した刀を勢いよく抜き取り、刀に付いた血を舐めた。





「言っただろ?歪んだ顔が見てみたかったんだって」

「は…は…っ…悪…趣味…だな……ガハッ…ゲホッ…」





遠退く意識の中、臨也は無無の額にキスを落とす。





「バイバイ……殺し屋の無無さん」





刀を放った臨也は路地から姿を消した。
横たわる無無の表情は、まるで何かの荷が降りたように笑っていた。









end...
 
 

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