短編とリクエスト
□希望絶望
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それは孤独。
それは喪失。
生みの親に捨てられ、親戚を転々とした少女は東京という都会の街に置いていかれた。
路頭にさ迷う少女を拾ったのは、ある男。
小汚い少女に住む場所を与え、食事を与え、何不自由のない生活を与えた。
そんな少女が男、折原臨也に依存するのに時間は掛からなかった。
優しく、ひとりの子供としてちゃんと接してくれる。
少女はそんな男が好きだった。
「無無。もう寝なきゃダメだよ」
「ぅん!でもまってぉ、もうちょっとしたらテレビおわうー」
「はいはい。終わったらベット行くからね」
折原臨也はこの生活に深く満足していた。
人間観察が趣味という少し歪んだ男。
絶望の淵に立たされた人間に手を差し延べたらどうなるか。
ただこれが観察したかっただけだったのだ。
案の定少女、名無無無は依存を始め、まるで子犬のように従順に育っている。
満足で、愉快で…男はいつも楽しそうな顔をしていた。
「おわったぉ?」
「よし。じゃぁおいで。もう寝ようね」
「臨也くんもいっしょー?」
「うん。一緒だよ」
両手を広げると迷わず飛び込む無無。臨也は抱き上げ、自身のベットに寝かせた。
無無はいつものようにぎゅっと臨也に掴まり、離れようとしない。
「そんなに掴まなくてもいなくならないよ」
「………だって……こわいもん…」
臨也は無無の隣に横たわり、優しく頭を撫でてやる。
「パパもママもおばさんもおじさんも……みんなみんな無無がねてるときにいなくなっちゃった…。ねてるときは見えないから……こわいんだもん」
「…大丈夫。俺はいなくなったりしないよ。ずっと無無といてあげる」
確証のない言葉を吐き、少女を洗脳する。
「ずっと?臨也くんは無無の前からいなくならない?」
「もちろんだよ」
少女はその洗脳にかかり、無邪気に笑う。
完全に折原臨也に依存した時が最後。
少女は100%の確率で捨てられる。
絶望から希望を与え、希望から絶望へと突き落とす。
そうした時、少女はどんな表情を見せてくれるのか。
考えただけで愉快なのだろう。
折原臨也は冷たい瞳をしたまま、眠る無無を見つめ口元を歪ました。
end...