折原家の愛しい妹

□偶然出会
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「だ、大丈夫ですか…!?すみません!」





電話越しからはひ弱な少年な声が聞こえた。
頭を一生懸命下げているのが容易に想像出来る。





「あ、いえ!私こそすみません。…あ。携帯落ちまし………た……」





ピタッと、少女の声が止まった。
おかしなことが起こっているのは間違えないのだが、兄にそれを知ることは出来ない。





「あの!もしかして来良に入学するんですか!?」

「えっ………なんで……」





落ちた携帯を差し出す少女。
そこにはチャット画面が映し出されていた。
日付は昨日のものだから、多分過去のログ。
今少女の目の前にいる少年はこれを見つめていたせいでぶつかったのだろう。





「東京から旅行で来たんですよ。私も来良受けるんです」






少女の言葉に少年は目を丸くした。
そもそもこんな田舎に旅行に来たというだけで驚きだったのだが、まさか来良に受けるという子に会ったなど奇跡に等しい。





「えっ…と…実は悩んでるんです…。友達に誘われてて…」





少年はモゴモゴと話し出す。
少女はそれに真剣に耳を傾け、うんうんと頷く。





「行くべきですよ!人生一度っきりなんですから…後悔なんてしないほうがいいですよ?」





少女の言葉に少年は目を丸くした。
真っ直ぐ自分に向けた言葉に、胸の奥がどくんっと脈打ったのが分かる。





「あ。もう行かなきゃ!これ、私のメールアドレスです。これも何かの運命、よかったらメールして下さい!じゃぁ!」





迷ってたのは君だろ?
話を聞いていた兄は今日一番の溜息をついた。
少女はそんな電話越しの兄に笑う。





「溜息つくと幸せ逃げちゃうんだよ?」

「俺は名無がいる限り幸せだから問題ないよ」

「あはは♪私もー♪」





少女は商店街へ向かいながらくだらない話を続けた。





少女が両親と出会うまで、あと30秒。

少女が両親に怒られるまで、あと45秒

少女が兄にお礼を言うまで、あと70秒。

少女が帝人と再会するまであと――――




 
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