短編小説

□短々編集
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ホワイトデー/ティキ


3月14日午後10時30分。

ホワイトデーが終るまであと1時間30分。

彼氏はいまだ仕事から帰らぬまま。

ねぇ、私 泣いていい?



だって、私ちゃんとバレンタインしたよ?

そりゃ料理上手の可愛い女の子じゃないから歪だったけど、

”おいしい”って言ってくれたじゃん。

全部うそだったの?

あの”おいしい”も、”お返し期待してて”も。

約束はしてなかったけど大事な日でしょ、今日は。

一緒にいたかったし、仕事だって聞いてなかったし、

私のことなんてどうでもいいの?



頬に透明の涙が伝った。

「何 泣いてるのよ、私。馬鹿みたいじゃん」

時間はどんどん過ぎていってとうとう残り1時間をきった。


もう寝ようか、と考えてたときガチャッというドアの音が響いた。

とりあえずてとてとと玄関に向かう。

「ただいま。おそくなってごめん」

「今日、ホワイトデー、お返し」

感情が出ないようにかたことで不満を。

「ちゃんと用意してるって」

驚いて、嬉しかったけど素直になんてなれずにちょうだいというようにてを差し出す。

「先にキスさせて」

意味不明。これで許して、とかいわないよね。

そんなことを考えつつ受け入れたのは優しいキス。

「手、見てみ」

いつのまにかはめられてた、左手の薬指、エンゲージリング。

「これって・・・」

「俺と結婚してください」

銀色にキラキラと光るリングを見つめたまま私は泣き出した。

「ふぇっ・・・うっうっうっ」

「どうした!?指サイズ違う?」

慌てたような声、子供みたいに泣きじゃくる私。

「良いの?・・・私で・・・」

ほっとしたような表情と共に抱きしめられる。

「ずっと俺のそばにいて」

「うん。ずっとティキのそばにいさせて」



3月14日午後11時57分。

二人は永遠の誓いを・・・。



それはとある3月14日、ホワイトデーの甘く幸せな物語。


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