短編小説
□短々編集
7ページ/47ページ
伝えたい言葉
「ティキ?どうして泣くの」
「お前が泣かないから。」
「そっか。」
そっと抱き締める白く細い腕。
くせのある黒髪を撫でて。
私の代わりに泣く彼を酷く愛しく思った。
――――――――――――
「なんでお前は泣かねぇんだよ!?辛いのに平気な顔して、むしろ笑って、傷ついたのを気付かれないようにって…。それじゃああまりにも…っ」
「泣くと疲れるから、だよ。泣くより笑ってる方が体力使わないのよ。それに私はティキに労って貰えるような人間じゃないから、そんな辛そうな顔しないで?」
何ともなさそうな顔で答えて、
偽物の微笑を作った。
それがいけないことだとは思わなかったけど、
私の前には涙を流す彼がいて、
「ごめんね?」
私は呟いた。
愛しい人を悲しませるのは嫌だったから。
私のために泣いてくれる人の存在が嬉しかったから。
――――――――――――
彼の涙は、純粋なんて言葉嫌いだけど、綺麗だと思った。
そしてそれはそっと届いて私の心の痛み止めになった。
「ティキ、ありがと」
私は限りなく本物に近い笑顔を作って言った。
彼にはきっと偽物だと気付かれてしまうだろうけど。
でも心から泣くことも笑うこともできないけど、
言葉は本物だから。
だから、私の言葉もティキの涙みたいに心に届けばいいと思った。
ずっと‘本当’を隠してきた私だから無理かもしれないけど、
嘘じゃないって信じてほしいと思った。
心から愛するあなたにだけは…。
end