短編小説

□短々編集
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伝えたい言葉




「ティキ?どうして泣くの」


「お前が泣かないから。」


「そっか。」


そっと抱き締める白く細い腕。


くせのある黒髪を撫でて。


私の代わりに泣く彼を酷く愛しく思った。







――――――――――――
「なんでお前は泣かねぇんだよ!?辛いのに平気な顔して、むしろ笑って、傷ついたのを気付かれないようにって…。それじゃああまりにも…っ」


「泣くと疲れるから、だよ。泣くより笑ってる方が体力使わないのよ。それに私はティキに労って貰えるような人間じゃないから、そんな辛そうな顔しないで?」


何ともなさそうな顔で答えて、


偽物の微笑を作った。


それがいけないことだとは思わなかったけど、


私の前には涙を流す彼がいて、


「ごめんね?」


私は呟いた。


愛しい人を悲しませるのは嫌だったから。


私のために泣いてくれる人の存在が嬉しかったから。

――――――――――――






彼の涙は、純粋なんて言葉嫌いだけど、綺麗だと思った。


そしてそれはそっと届いて私の心の痛み止めになった。


「ティキ、ありがと」


私は限りなく本物に近い笑顔を作って言った。


彼にはきっと偽物だと気付かれてしまうだろうけど。


でも心から泣くことも笑うこともできないけど、


言葉は本物だから。


だから、私の言葉もティキの涙みたいに心に届けばいいと思った。


ずっと‘本当’を隠してきた私だから無理かもしれないけど、


嘘じゃないって信じてほしいと思った。


心から愛するあなたにだけは…。



end

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