短編小説
□短々編集
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七夕
「晴れてよかったね。ほら、よく見えるよ、綺麗だね、ティキ」
今日は七夕。2人で星を見に来てる。
彼女が言ったとおり、今日は空が澄んでいて、眩しいぐらいよく星が見える。
七夕といえば、織姫と彦星の切ない恋物語。
1年に1度だけ会うことが出来る、永遠の恋人。
「でもさ、1年に1度しか会えないのに、恋人のことずっと想ってられるのかな。他の人に揺らいだりとか、ないのかな」
「またそんな現実的なことを」
「だって現実主義者ですから」
そういって、笑う。
少し哀しげな含みも持って。
今日だって星を見にいこうなんて彼女にしては珍しいお誘いで。
「・・・でももし俺が彦星でお前が織姫だったなら・・・」
「うん?」
「絶対揺らいだりなんかしねぇな」
「そう?だって1年に1回だよ?橋のこっち側にはすごく可愛い子が現れるかもしれないじゃない」
「そんなことないよ」
「どうして?」
「お前が一番可愛いから」
一旦、彼女のすべての動きが止まる。
そしてそのあと、今度は幸せそうに笑うんだ。
おれはその表情がとにかく好きで。
笑ってくれるならどんなことだってしたいと思う。
「ティキの馬〜鹿」
「お前っ、それひどくね?」
「事実でしょ?」
楽しそうにしてくれるならそんな暴言も許せてしまいそうな俺は、相当重症だと思う。
「ね、ティキ。でもね、ずっと傍にいて」
「それは・・・」
「織姫と彦星みたいに、1年に1度しか会えないのなんて、嫌」
もし、ティキがずっと想っててくれるとしても、と言い足して。
「当たり前だろ?俺だってお前が傍にいなきゃ生きらんねぇよ」
そう言えばすりよってきて。
「ありがと」
なんて呟いて。
どうしてこんなに可愛いんだか。
そしてなんて愛しいんだ。
俺らしくねぇな。
だけど本当にそれぐらい、あいしてる。
だから、
誓いを立てるよ、お前に。
[お前の笑顔が歪んでしまわないように、
俺が一生をかけてお前を守る]
とか、キザな台詞で。