短編小説

□短々編集
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少年が一本のばらを見つけた 

荒れ野のばらを


ばらは若々しく朝のように美しかった


少年は近くで見ようと走り寄り

感動してそれを眺めた


ばらよ ばらよ 赤いばらよ  荒れ野のばらよ





ハイデンレースライン





戦場。濃厚な血の匂い。

赤く紅く染まった地面。

そこらに散らばる、元 人間だったもの。

残酷な残酷なワンシーン。

彼はそれを好んだ。




そこに佇む1人の生存者。

若い女性。

いや、

幼い少女。

瞳は怯えて揺らぎ、

体は恐れに震える。

哀れな憐れな生存者。

彼が好んだもう1つのもの。





「お嬢さん可愛いし・・・

 生きるか死ぬか、選ばせてやるよ」

にっこり、綺麗に笑って

少女の目をしかと捉える。



少女はゆっくりと震える唇を開き、

恐怖にかすれる声でこう呟いた。

「死にたく、ない・・・わ」




それを聞き取ると彼は満足気に表情を和らげた。

少女はそれに少し安堵し、体の力が抜け、座り込んでしまった。

彼、ティキが抱き抱えれば、されるがまま。

仲間の死体の元から連れ去られようと、その温もりに反抗など出来ず。

優しく語り掛けられれば、疲れに眠気を誘われる。




「やっと見つけた。俺だけの薔薇」




一本の薔薇は永久に彼のもの。

彼の心を捉えたのは、荒野で出会った1人の少女。



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