短編小説

□短々編集
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約束



また、一年が始まるんだ。


繰り返し、季節は廻って。


1日、また1日と生きて。


やがて跡切れるその日まで。


あたしはきっと貴方のそばにいたい。




「ティキ、ありがと」


「何が?」


「一緒にいてくれて」


「…どういたしまして」


「それとね、」


「ん?」


「また一年よろしくね」


「こちらこそ」


改めると、なんだか恥ずかしくて、おかしくて、二人して微笑を交わす。


こういう瞬間を幸せって呼びたい。


抱き寄せられて感じる鼓動が、


二人で今を生きているんだと感じさせてくれるから。




「ねぇ、あたし、すごくティキが好き」


「そりゃよかった」


「ティキは言ってくれないの?」


「勿論、俺も愛してるよ」




未来のことなんてわからないけど、


なんとなく、あたしの一生をかけてこの人を愛せる自信があって


多分、そういう風に思わせてくれる人を、運命の人とかって言うんだと思った。




永久でない命だからこそ


永遠の愛を求めるんだ。


いつか朽ち果てるのを知っているから


その日を大切に出来るんだ。


その限られた時間の中で、あたしは


貴方のために生きて、貴方が辛いときには支えられる存在でありたい。


貴方は、どうですか?


もし、同じように想ってくれるのなら、


あたしは、この上なく幸せです。




戦場の二人は、儚く散ってしまうのでしょうか…?


もしそうであっても、最期の瞬間まで君を想うから


大丈夫、大丈夫だよね。


身体は一度朽ちても、戦火に焼かれて灰になっても


きっと、また会えるよね。


だから…




不意に触れた暖かな唇に


驚いて目を開ければ


離れた貴方と視線がぶつかる。


「お前は、俺が守るから」


「約束、してって言ったら、怒る?」


「お前がそれで安心できるなら、いくらでも」


「うん、じゃあ…」




小指と小指を絡めて


子供みたいに、針千本の罰と引き換えに、


強い強い願いと共に。


約束をしましょう


きっと、ずっと、忘れないように…



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