短編小説

□短々編集
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バレンタインデー


ふわりと漂う甘い香。


少し緊張したような表情。


赤いリボンのかかったそれを差し出す白い腕。


俺とかなりの差がある身長。


その、全てが愛しくて。





「ティキ、これ」


毎年、当たり前のように渡してきた。


家族だからという理由で、勿論ティキだけじゃなく千年公とか、みんなに。


でも今年は、今年こそは。


募る想いを伝えるの。


家族だから、じゃなくて、ティキが好きだから、って…。





ずっと、その声で聞きたかった言葉がある。


ずっとキミを手に入れたくて仕方なかった。


細い体を抱き締めて、柔らかな唇を塞いで。


キミを独占出来るのは俺だけなのだと知らしめたい。


さぁ、聞かせてくれ。


そんな欲望を実現可能にする一言を。





「ティキ、あのね」


心臓が、痛いくらい速く動いてる。


今の穏やかな日常が続かなくなってしまうのを恐れた。


でも、少しだけ、イベントに勇気をもらったから。


言える。断られたら、笑って、こっちこそごめんね、って言えばいいの。


そしたら、ルル姉に泣きながらたくさん弱音聞いてもらおう。


ロードちゃんも、飴とかくれるかな。


だから、大丈夫。頑張れるから。





「私はティキが、好きです」





2月14日・バレンタインデー


この日だけは女性から男性に求愛していいと言われている。


そっと、懸命な震える声が届いたなら、


答えは、きっと…。





「俺も、好き」





さぁ甘いチョコレートに想いをのせましょう。


胸をしめる‘好き’の気持ちを精一杯込めて贈るの。


小さな勇気は、きっと何かを与えてくれるから。


END

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