短編小説

□短々編集
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「ティキのお願い事って、なぁに?」


笹の葉は飾らない。短冊も書かない。


けれど毎年、星だけは見たくて。


ぼんやりと、あたしとティキは夜空を眺めている。


「俺は、お前がずっと側にいてくれますように、とか。…で、お前は?」


星がひとつ、静かに瞬いた。


織姫と彦星は今年もちゃんと出会えただろうか。


色々と考えて暫く黙っていたけれど、やがてそっと口を開いた。


「あたしは…、ティキが幸せでありますように、かな」


何故か、そう口にした途端、泣きそうになった。


広い空に、淋しくなった。


思ったよりあたしの声は弱かったけれど、静かな世界にはよく響いた。


「嘘、吐いてるだろ?」


ティキがあたしの目を覗き込む。


あたしは笑ってみせた。


「当たり、嘘でもある。…でもね、本当だよ。本当にそう思ってる」


笑顔を作ったままのあたしの顔に、涙が一滴伝った気がした。


けれど、気付かないふりをしていた。


それをティキの指が拭って、ティキの手があたしの頬を包んだ。


温かくて、安心した。


「あたしは、ティキが幸せならティキの横にいるのがあたしじゃなくても構わないと思ってる。

ただ、欲をいえば、出来ればあたしであると良いと思う」


貴方の自由を奪う枷にだけはなりたくないから、いつ捨ててくれても構わないから。


そう伝えたいのに、直接的に言うのは怖すぎた。


願うなら、愛してるから、誰よりも側にいたいもの。


いつしか、伝う涙は止まらなくなっていた。


ティキの相変わらず優しい手は、今は小さい子を宥めるようにあたしの髪を撫でていた。


「よく聞いてな。そんなに心配する必要も不安になる必要も無く、俺はお前を愛してる。何処にもいかない、俺はここにいる。信じられないなら信じなくてもいいから、覚えててほしい」


嬉しいのか落ち着いたのかわからないけど、胸がいっぱいで。


あたしは、ただティキの言葉に頷くことしか出来なかった。




星に願いを、君には愛を。

(この静かで優しい時間が、永遠に続いてほしい)



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