短編小説

□短々編集
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例えば、触れた指先に迷いを感じたりだとか

いつか来る終わりが鮮明に見えた気がしたりだとか

そうした瞬間に、幸福が怖くなって

ひたすら、目を閉じていたり、する。



だから

「どうしたんだ?」

だから、そんな風に問わないでほしい。

「大丈夫、だから」

感情が死んでいくの。

「嘘吐くなよ。顔色が悪い」

深い闇の中に、葬られるような。

「本当に何でもないから」

でも、他人を巻き込むには広すぎる。



優しく伸ばされた指先を振り払ったら、哀しい顔をした。

振り払ったのは壊れ物に触れるような手付きが嫌だったからで

でもそんな顔をされるのはもっと嫌で

どうしていいか分からなくなって混乱しているうちに離れていって

閉じていく扉が永遠の別れのようだった。



けれど、縋り付くことも声を出して呼ぶことも出来なかったのは

私が人を信じられない醜い人間だから。

恐怖だけが先走って思考だけやけに明確で

くだらない理屈を並べて愛することから遠退こうとしているから。

だから、見捨ててくれるなら楽になれる。



なのに、

振り向いて、駆け寄って、抱き締めるから

必死で、暗いところから連れ出そうとしてくれるから

苦しくなって、弱くなって、泣き出した。






不器用

(大好きな貴方を困らせることしか出来ない)


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