短編小説
□短々編集
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ふと突然、今まで会話をしていたのが嘘かのように
まるで独り、世界から離れた場所に佇むみたいに
目が光を無くして、表情が消えて
俺から遠ざかっていくように、感じた。
だから
「どうしたんだ?」
だから、呼び戻したくて、繋ぎ止めたくて。
「大丈夫、だから」
そんな顔をして、大丈夫なワケねぇだろ。
「嘘吐くなよ。顔色が悪い」
話してくれよ、痛みでも何でも。
「本当に何でもないから」
無理矢理の笑顔なんて見たくない。
頬に触れようと手を伸ばしたら、振り払われた。
ひどく怯えた顔をして、自分のしたことに戸惑うように。
俺に対してはそんな顔したことなかったのに。
拒絶されたことがショックで、取り乱してしまいそうで
少し時間を置いて冷静になろうと、部屋を出ようとした。
今までにも何度かこういうことはあって、その度に些細な口論になったりした。
愛しさだけが空回りして、巻き込んでくれて構わないのに
一向に心を開こうとしないで、1人で抱き抱えているから。
一歩近寄っては一歩遠退かれるような
そんな距離に、嫌気が差した。
それでも
ふと振り返って、見えた必死の表情に、駆け寄らずにはいられなくて
抱き締めたら小さい子供のように泣き始めるから
どうしても、手放せなくなってしまうんだ。
不器用
(無理矢理にでも愛したい)
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