短編小説
□短々編集
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「大っ嫌い」
口に出して言ったら、すごく切なくなった。
嘘を吐こう。偽ろう。
それがきっと一番、手っ取り早い。
忘れたい。忘れたい。
気付きたくなんてなかったんだよ。
「好き」って言えたら良かったのに。
言える立場なら良かったのに。
世間はクリスマスではしゃいで、笑い合って、幸せなのに
こんなに寂しいのは、きっと叶わない恋の所為。
あたしのことなんてどうでもいいなら、どうして「嫌い」って言う度あんな悲しい顔するの?
最初はただ、好きっていう気持ちを消したくて、あたしは先生が嫌いなんだって思い込みたくて、そのために使った言葉だったのに
今じゃもう、傷付いた顔が見たくて、あたしのこと気に掛けてくれてるんだって勘違いしたくて、そんな醜さから出る言葉になった。
明日から学校は二週間のお休みに入る。
あたしからすればそれはとても長い期間で。
その間に何が起こるか分からない。先生に特別な人ができるかもしれない。
好きなんだ。どうしたって、どんなに繕ったって、無かったことには出来なくて。
夕暮れ。帰り道に立ち止まって、校舎をそっと振り返り。
がむしゃらに、泣きそうになりながら来た道を戻る。
お願い、お願い、まだそこにいて。
多分、伝えなくちゃあたしは前には進めないから。
神様、神様、クリスマスに奇跡、起こしてよ…。
「せんせ…」
「お前、まだ残ってたのか」
「戻ってきたの」
「忘れ物?」
「大嫌い」
「…知ってる。てかまさかそれ言うために来たの?」
「そう。言わなくちゃって、思って」
「わざわざ俺を傷付けに来たわけか」
「…好き」
「…………は?」
「ずっと、好きだった、の」
小さく、小さく、呟いた。
聞こえてなければ良いとも、思ったのに。
そんな間抜けな顔、しないでよ。
こちとら青春真っ盛り。純情乙女、必死なんだから。
泣き出しそうなんだよ。たった二文字、それでも声はガタガタに震えてるんだよ。
ねぇ、何か言ってよ、先生…。
「お前…」
死刑宣告を待つような気持ちがした。
お休みが終わって、授業が始まって、その時には今まで通りに何の変化もなく「教師」と「生徒」としていられるのかな。
そうしなくちゃいけない。きっと、二週間もあれば大丈夫。
一瞬の間に、目まぐるしくそんなことを思った。
静寂がただ、苦しくて。
「ごめんね、先生」
逃げ出そうとした。
「待てよ」
腕を掴まれて引き寄せられて、表情もよく見えないうちに重なった唇は、何を意味するんだろう。
想いだけで始めましょう
(俺達の年の差、知ってる?)
(知ってる)
(それでいいの?)
(いいの。先生が好きなの)
(それなら、おいで。愛してあげる)