短編小説
□短々編集
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混沌とした
血に濡れるたび、思うの。
早く、終われば良いのに。
くだらない人間なんて嫌い。
だけど人殺しの自分も嫌い。
本能のまま、ノアの遺伝子のまま、
自分の意志とは関係なく動く体が嫌い。
だってこの腕は、いとしい人を抱き返すためにあるのに。
「ねぇ、ティキ、
戦争はまだ終わらないの?これからも血は流れ続けるの?もしかしたら家族が死ぬかもしれないの?ティキはまた人を殺すの?それって私といることより大切?」
そう問い詰めると、ティキはいつも困った顔をする。
苦笑いして、私の頭を撫でる。
「ティキにも、わからないの?」
「ごめんな」
「そっか…」
何がいけないんだろう。
どうして、何かを失わなくちゃいけないんだろう。
それによって得られるものは何なの…?
私は、ティキと一緒にいられればそれが一番の幸福なのに。
「ティキ、私のこと、好き?」
「ああ。愛してるよ」
私にはまだ分からないことが多すぎて
貴方のくれる愛の言葉だけが、真実だった。
end...