短編小説
□短々編集
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(ああ、ふわふわする…)
ゆっくりと目を閉じて、開く。
未だ不安を残したまま見上げれば、優しい苦笑のような微笑。
やっぱり少し躊躇う?そうよね。
私だって、どうしていいか分からないのに。
2人の気持ちさえあれば大丈夫。
ねぇ、本当にそうかな?
私はティキを不幸にしたくない。
もっと良い境遇で、普通に祝福される相手と、幸せに。
その方がずっとずっと穏やかで平和な生活が出来るのに。
それでも今噛み締めているのは、不安よりも泣きだしそうになるくらいの幸せ。
戸惑いも躊躇いもあるけれど、私はティキといたい。
そのためなら何だって出来るし、したいと思う。
父様に嫌われたって、ティキの家族に受け入れてもらえなくたって、ティキさえ望んでくれればきっと迷わない。怖くない。
「結婚しよう」
そう言われて差し出された手をそっと握った。
初めて手を繋いだ時みたいに緊張して、少し震えた。
強く優しく握り返してくれた手は温かくて、とても安心した。
触れるだけのキスをすると、繋いでいない方のティキの手が私の後ろ髪に触れて、もっと深く。
幸せで、嬉しくて、眩暈がした。
ああでも、ここからが難関。
見上げた私と見下ろすティキは、多分同じ顔をしてた。
「ちゃんと挨拶しに行こうな」
「…うん」
「反対されても、何度だって頭下げるし」
「うん、私もそうするから、」
「それでも、もし駄目でも」
「うん?」
「俺ときてくれるか…?」
「…当たり前、でしょ?」
出来るだけ明るく笑った。
ここにある確かな温もりを、私は手放したくない。
きっときっと大丈夫だって、信じてる。
隣にティキがいてくれれば、私は無敵だから。
「ね、ティキ」
「ん?」
「私はティキを愛してるから、ティキが私を欲してくれれば何があっても大丈夫なの」
だから、何も怖くないよ。
「ああ。お前は俺が絶対に幸せにするから」
「うん。私も、頑張っていいお嫁さんになるね」
金色の目が私に優しく笑いかけて、私は彼に寄り添った。
6月の姫君
(純白の衣装で薬指には銀の指輪)
(私達はこれ以上ないくらい、幸せそうに笑い合って)
(そんな、ずっとずっと憧れてた未来を、迎えに行くの)
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ティキ=伯爵の息子
ヒロイン=クロスの娘
で、伯爵とクロスはそれぞれ大手企業の社長で二社はライバル
なんていう設定でした、一応…