短編小説

□短々編集
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塾の短い廊下の上。

一番奥の部屋の扉が開くのを、じっと待ってた、のに。

ありがとうございましたー、とか言いながら出てきた生徒は綺麗な女の子ひとりで。

擦れ違ったときに香った甘い香水が胸を締め付けた。

そのまま、女の子に少し遅れて出てきた男性教師を睨む。


「随分と楽しそうでしたねー」

いらいらとわたし。仲良くできない。

口を開けば嫌味ばかり。自分に呆れているの。


「まさか俺の授業が終わるの待ってたの?」

それなのに微笑んで近寄る貴方。

大人の余裕ってやつ?気に入らない。


「こんな時間まで女子生徒と二人きりで補習だなんて、先生はとっても優しいんですねー。わたし、感動しちゃいました」

棒読みのセリフは精一杯の強がり。

不安も妬みも隠しきれない自分の幼さに幻滅。



「怒ってんの?」

「…怒ってるよ」

何分待ったと思ってるの。

「可愛いな」

「何処が」



頭にぽんと手を置かれて、黙る。

こんな苛つき、理不尽すぎる。

授業が終われば会えるかと思って勝手に待ってたのはわたしだから。

それなのに授業が終わるのが遅いだとか、女子生徒の高い笑い声が気に入らないだとか、不満を持つのはお門違い。

わかってる。わかってるからこそ。

自己嫌悪ばかりなの。慰めてよ。



「せんせーのばか。ロリコン教師。幼女趣味。サイテー」

「何を今さら」

「今さらって何よ」

「お前の所為だって」



もう廊下にも教室にも、このフロアにはわたし達以外いない。

だから先生は、わたしをぎゅっと抱き締める。

その広い背中に腕を回して、もう離さない。つかまえた。

この瞬間くらいは、わたしだけの先生でいてほしい。



「せんせー、」

「ん?」

「わたしのこと、好き?」



先生の胸に顔を埋めたまま問い掛ける。

きちんとした言葉がなくちゃ不安だなんて、本当に幼い。



「俺、欝陶しい女は苦手なんだけどな」

…そっか、そうだよね。

「…ごめん」

自惚れ過ぎ。どこかで肯定してくれるような気がしてた。

「でも、なんでだろうな。お前のことは可愛くて仕方ない」

「…え?」

思わず顔を上げて先生を見た。

「愛してますよ、お嬢さん」

バッチリ目が合って、なんだかすごく恥ずかしい。

慌ててまた顔を逸らすと、クスクスと楽しそうに笑われた。






マシュマロガール

(大人で余裕で意地悪で、でもやっぱり先生が好き)


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