短編小説

□短々編集
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ねぇ、だから、

だから言ったのに



絶対なんてないよ

大丈夫だなんて嘘

もう笑わないで

貴方は優しすぎるの



守ろうとなんてしなくていい

自分の身くらい自分で守る

あたしのためなんかに犠牲にしないで



「…ティキなんて、嫌い」

あたしの奥から溢れだす

胸が苦しくて堪らない

「嫌い、嫌い、大嫌い」

嗚咽混じり 子供みたい

どうしてもどうしても止まらない



「…ごめんな」

後ろから支えるように抱き締められる

ティキの大きい手があたしの目を塞いで、温もりに甘えるように益々あたしは泣きじゃくる

「…嘘吐きっ、ティキの嘘吐き」

ずっと一緒って言った

側にいるって言ったのに

「いなくなっちゃだめなのっ…、ティキ以外の人になったりしたらいや…いやだよ…」

あの時のティキはティキじゃなくて

それ以降もずっと不安定で

またあの時みたいになったら、もう二度と戻ってきてくれないんじゃないかって



「俺は大丈夫だから」

あたしを抱き締める腕の力が強くなる

顔なんて見えないまま、それでも響く声を感じてる

「大丈夫なんかじゃ…っ」

「お前がいれば大丈夫」

あたしの声を遮って重なった言葉

それはティキが自分自身に言っているようにも聞こえて

何もできないあたしの無力さが悔しくて、痛くて仕方ないの



「ここにいて。俺の側に居て」

請うようなこんな弱い声

所詮あたしとティキは別の個体で、ひとつになんてなれないから

「探すよ、あたしずっと探す。ずっとずっと探してティキのこと見付けるから。…だから、ティキは消えたりなんかしない…っ」

そんなのただの幻想

それでも、そう信じなきゃ壊れちゃいそう

貴方が幸せに笑える世界じゃなきゃ、いらない

何をすれば救われるの…?



「お前がいれば俺は俺でいられるから」

「…離れたりなんかしないよ」

あたしは、他の誰でもなくティキを愛してるから。

ティキのためなら、何も厭わしく思ったりしない。

たとえ出来ることなんてなくても、諦めたくない。

だから、ティキもここにいて…。

そっと触れた唇があまりにも優しくて、切なさに押し殺された





真っ黒な朝が来る前に

(引き裂かれないように、ふたり強く寄り添っていよう)
(ぼくらは弱くて、そうすることしかできないから)
(ぼくがきみをまもる、なんて言葉を簡単に言えたなら)



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