短編小説

□短々編集
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血…塗れ……?

「うわ…」

うそ、なにこれ。

ここは、どこだったっけ。

血道…破、裂?臓器は欠損。

ずいぶんと凄惨。噎せる。

濃い。濃い。乞い、煩い。

繰り返し。恋、しちゃう…。

芳香………。



「だれ…」

…だれ、だった?

違う。知ってる。分かってる。

名前も何も知らない。でも。

何度も会った。会った、よね?

中の奥の方。あたしの、夢の。

血の海の中心、で、笑う。

黒。黒い、見惚れる、様な…。



「驚かせてくれるね、お嬢さん。
一体どこから出てきたんだ?」

苦笑、混じり。

ああ、本当。あたし、浮いてる。

黒と赤。ダークファンタジー。

あたしの学校の普通すぎる制服は不似合い。笑える。

貴方には…。



水音。近寄る。触れる。

心臓。振幅。どきどき、する。

「よく分かんないんだけどさ、

お嬢さんも一応、死んどく?」

手指。温度。思ったよりずっと。

同じ人間、なんだ。不思議な人。

くらくら。くらくらする。

酸欠?苦しい。胸の奥、きゅう。

うれしい。嬉しい。あたし。

脱出、できたよ。異世界、に。

憧れてたような、世界、人…。

うわぁ……。



「おに…さん、あ、たし、おにー…さんの、こと、好き…」

満ちた。初めて満ち足りた。

わくわくする。

「命乞い?面白いね」

あたし。むっとする。感情的。

珍しい。少し、戸惑う。

「そ…んな、つま…ない、もの…じゃ、ない…か…ら…」

「普通」は、だめ。

当てはめちゃやだ。

そんな感覚に閉じ込めないで。

貴方だけは…。

「…やっと、会え、たの…」

あたしの、理解者、兼、×××。

だから。

「これ、はね…運命の出逢い、なんだ…よ…」



笑った。あたし、と、もう一人。

ほら、ほらね、楽しい、でしょ?

歪んだ。あたし、しあわせ。

ばいばい、平常…。






憧憬

(首を掴む手がゆっくり離れて)
(それでも胸の奥、どきどきして苦しいままなの)



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