月光の円舞曲

□エピローグ
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長い長い夢を見る。
小さな舟で、広大な海を、ひどく焦って進む。
まだ遠く見えないはずの戦火が胸をよぎる度に、もっと早く、もっと早くと願うのに、同時に押し隠したはずの不安が大きくなって頭を埋めていく。
この舟が沖に着いてしまったなら、私は。
ちゃんと決めた通り、歩き通せるだろうか。
私は、そして貴方は、どんなに無様に死んでいくのだろうか。
誰も死ななければいいのに、なんて、これまで見てきた現実にそぐわない軽薄な願いが過って自嘲してしまう。
この戦はどちらかが掃討されるまで終わらない。
私の知らない長い長い歴史がずっと語ってきたことだ。
できるならもう一度だけ、出会った日のように、精一杯に着飾って貴方とダンスを踊りたかった。

夢の最後は、息絶える直前で横たわった私の視界の端で、彼が彼であるための何かを失って、倒れていく姿。
同じ、ただの人間として生まれて出会えていたならと、何度も思った。
けれど、私が私の役から降りられないように、彼も彼の運命を抱えて、きっとそうした私達だから出会えて、いとおしく思ったのだろう。
ああでも、私も貴方もこんな終わり方しかできないなんて。



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