現世と常世
□おきつねさん
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おきつねさん
これは私が不登校になって、ひょんなことからお稲荷様のお祭りにいくことになった時の話です。
祖母に連れられてきたお稲荷さんのある小さなお堂は、山に囲まれていて人が居ないことに安心したのを今でも覚えています。
お稲荷さんに経を読む住職さん。周りはみんな大人ばかりで、私は退屈になりながらお堂に頭を下げていたのですが…ふ、と何かが楽しそうに笑っているような気がして頭を上げたのです。
「…ぁ」
お堂の屋根に美しい真っ白な狐が乗っていて、心底楽しそうにクスクスと笑っていたのです。
呆然とその優美な狐に釘付けになっている私に、見ている私に狐は気づいたら慌てたようにお堂の中にまるで絵巻で見たぬらりひょんのようにお堂を通り抜けたのです。
狐がいたはずの場所を見上げていたら、いつのまにか経は読み終わっていて、祖母にお稲荷さんに挨拶しな、と言われた。私は何気なく祖母に問いた。
「ここ、白い狐……いる?」
そう言ったとき、祖母の驚いた顔と住職さんの羨む声が聞こえました。
「そりゃ、ここの守り神様だぁ…そうかぁ、お前さんには見えたんかぁ…」
住職さんの話によれば、先々代の住職さんにも白い狐は見えたらしい…
「白いお稲荷さんを見た人は幸せになるんだぁ」
幸せ、住職さんの言う幸せはもしかしたら富や名声のことなのかもしれない。
もったいない…その幸せはきっと見なくても味わえるもののことなのだろうに…きっと先々代の住職さんは知っていたのですね。
この稲荷堂がある山は綺麗な風に包まれて水が流れている。
「…しあわせ、たくさんあるのになぁ」
稲荷堂の山は白いお稲荷さんが今もずっと見守っている場所でした。
まぁ、余談ですが…それから暫くは福引などを引いたりすると1位や2位が出てきたのは…
住職さんには秘密にしておきます。(笑)