特別企画作品
□土方の覚悟
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『ふぅ……』
山積みだった書類も粗方目を通し終わった所で、俺は静かに息を吐き出した。
毎日毎日こう書簡と睨めっこしてたんじゃあ、眉間の皺も刻まれて当然だ。
しかも総司の野郎は俺の顔見るたんびに『土方さん、皺が増えたんじゃないですか?』なんて言いやがる。
そんな事を考えてる時だった。
『土方さん。お茶をお持ちしました。』
障子の向こうで聞こえたお前の声に俺の頬もつい、緩んじまう。
そしてお前が障子を開き入ってきたはいいが、お茶を置いてそそくさと出ていこうとする。
なんだ?
『おい!』
俺の声にビクッと反応するお前の後ろ姿を追って手を伸ばし後ろから抱き締めてやると、俯いたお前の顔を俺は横から覗き込んだ。
『もう…戻るのか?』
俺がそう言うと、お前が俺の腕の中でもじもじと動き出し、俺の顔をチラッと見てから口を開いた。
『土方さん……ご機嫌が、悪いのかな?って……っていうか、お忙しいんですよねっ』
『………どうしてそう思った?』
すかさずそう聞けば、ハッとした顔をしながらまた俯きやがった。
『あ、いや……その…』
何時もなら俺との時間が欲しいからと、お茶を持ってきては俺の部屋に喜んで居座るお前が……様子がおかしい。
『どうした、言ってみろ。』
抱き締める腕に力を入れて耳元で囁けば、また俺の顔をチラッと見やがる。
『土方さんの…眉間に皺がある時は、機嫌が悪いから近付かない方がいいよって。』
なにっ?!
誰だ?そんな事吹き込んだ奴は!
……アイツしか居ねぇ。
総司の野郎……。
俺はこいつの腰に腕を回し、身体を反転させ俺の方へ身体を向けさせた。
『総司の話なんか鵜呑みにするんじゃねぇ。……この皺が気になるんなら、お前がとれ。』
そうなるべく穏やかな口調で言ってやると、真面目なお前は困った顔をする。
『わ、私に土方さんの皺を取るなんて…無理ですっ!』
そう言い放ったお前の眉間にも皺が寄ってるんだがな。
『こうすれば……皺もとれんじゃねぇか?』
両手でこいつの頬を包み込んで少し上を向かせる。
目をまん丸く見開いたお前の顔に俺は自分の顔を近付ける。
お前のその柔らかそうな唇が息を吸い込むのに微かに開いた瞬間、俺はすかさずそこへ自分の唇を重ねた。
直ぐ様舌先を捩じ込み、お前の舌先を絡めとる。
まん丸く見開かれていた目の大きな瞳が潤みだし、お前の瞼がゆっくりと閉じていく。
そして俺の背中に手を回し、俺の着物をきゅっと掴んだ。
チュッ、チュクーーーー。
わざと音を立てながら何時もより練っとりと舌を絡める。
絡めては吸い…それを繰り返してはお前の反応を確かめる。
苦しそうに瞼をきつく閉じているお前が可愛くてしょうがねえ。
『見てみろ。もう、皺はねえだろ?』
そう言ってお前の目を開けさせると、再び開いたお前の瞳はもう俺しか見えなくなってる筈だ。
『は……ぃ…』
その返事を聞いて、俺はお前の身体を横向きに抱き上げる。
自然に俺の首へ回されるお前の腕。
『ゆっくりしてく…だろ?』
お前の耳元で小さく囁いてやれば、黙って首をこくっと動かすお前。
お前とやる事やってりゃ俺の皺なんか直ぐに消える。
その位いい加減気付け。
俺はそんだけお前に惚れてんだ。
早速灯りを消して…
お前に俺の皺を消してもらうとするか。
だが俺の皺は直ぐに戻っちまう……
毎晩お前を抱かねえとなんねえな。
そーゆう訳だ。
覚悟はいいか?
そのまま畳の上に降ろしたお前を、俺は一心不乱に貪りだす。
着ている着物を剥ぎ取り、お前の身体中に俺の印を着けていく。
暗闇の中で重なり合う肌と肌の温もり、重なり合うお互いの唇の感触。
そしてーーー。
すんなりと俺を受け入れるお前の此処が締め付ける快感。
直ぐにもってかれちまいそうになる。
もしかして、覚悟が必要なのは俺の方じゃねえか……。
ったく、この俺に覚悟を決めさせるなんて……凄え奴だなお前は。
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