特別企画作品
□無防備な君
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「あ…んん、そこ……はぁ…ん…」
僕と一君が廊下を歩いていた時に聞こえてきた声。
艶かしい君の声。
毎晩僕の耳だけに届く筈なのに…なんでこんな明るい内に聞こえてくるわけ?
しかも一君に聞かれちゃったし……それよりここっ!
土方さんの部屋なんだけど!
「ここが……いいのか?」
こんな優しそうな土方さんの声聞いたことない。
「ぁ……はい。そこ……んッ…」
な、なに?
「こっちもだろ?」
「左之さん、こっちも良さそうだよ。」
「平助、ちょっとこっち押さえとけ。」
「ぁあ…そっちも……いいッ…」
ちょ、ちょっと待ってよ。
土方さんだけじゃない?
左之さんや平助も?
「ねぇ、一君。この声ってあの娘……だよね?」
僕は聞き間違えたりしないけど、一応一君に聞いてみる事にした。
だけど一君の様子がおかしい。
「確かめてみる。」
え?
「確かめるって……ちょっ!一君っ!?」
ーーーーースーッ
あの娘の乱れた姿が見られちゃうっ!ってそれよりみんなと何してるかの方が気になるんだった!
「へ?斎藤さん?……沖田さん?」
は?
僕の目に映ったのはうつ伏せで寝転んでる君の周りに男が群がってる……頭に手をかけてる土方さんに、足の裏を触ってる左之さん。そして手のひらを握りしめてる平助。
「斎藤に総司か。何か用か?」
何か用か?は無いよね。
その娘は僕のなんだけど。
なんで僕のその娘にみんなが群がってるの?
「ーーーーいえ。では失礼します。総司、行くぞ。」
な、なに言ってんの一君。
この状況で帰れる訳ないじゃん。
「ちょっと土方さん。この娘返して下さいよ。」
僕がそう言ってこの娘の手を取ろうとすると、平助にパシッと手を叩かれた。
「斬られたいの?」
ギロッと平助を睨み付けると足元にいる左之さんが口を開いた。
「おいおい、総司。いつからコイツがお前のもんになったんだ?」
「そーだそーだ!」
左之さんの言葉に平助が乗ってくる。
「総司。お前はさっさと部屋に戻れ。斎藤はもう行っちまったぞ。」
頭を押さえてる土方さんがそんな事言っても、僕はこのままじゃ戻れない。
「この娘は返してもらうから。」
無理矢理君を抱き上げて、僕は逃げるように土方さんの部屋を後にした。
自分の部屋に戻った僕は君を降ろしてきつく抱き締めると、とんでもない言葉が耳に入ってくる。
「お、沖田さん?あの…誤解しないでください。皆さん私が疲れてるだろうからって、身体を揉みほぐしてくださってただけですから。」
さらっとこんな事を言ってくる君……本当に困っちゃうよね。
「そんなの分かってる。けど、僕以外の男に身体を触らせるなんて……ちょっと無防備すぎない?」
両手で君の頬に手を添えてグッと僕の顔を近付けると、少し泣きだしそうな顔になっちゃった君。
可哀想だけど可愛い。
「ご、ごめんなさい。でも皆さんいつも……」
は?!
今すごい事言った?!
「いつもって。前にもこんな事があったわけ?」
怖い顔で聞くと言えなくなっちゃうだろうから、なるべく僕はニッコリしながら聞いたけど…。
「な、なんか怖いです沖田さん。」
人が折角優しく聞いてあげてるのに!
「ちゃんと言わないと斬っちゃうよ。」
僕はもう一度ニッコリ笑ってそう言うと、小さな声でゴニョゴニョと話し出した。
「この前は山南さんが肩を揉んでくれて…その前は永倉さんが足を揉んでくれて…その前は……。」
!?!
「ちょ、ちょっと待ってよ。そんなに?……一体誰が一番最初にやりだしたわけ?」
全然知らなかったーーーーっていうより、きっとみんな僕が居ない時にこの娘に触れてたんだ。
「斎藤さんが…一番最初に全身を揉みほぐしてくれて。それから皆さんが毎日交代でやってくれるように。」
!!!
「は、一君っ?!毎日交代で?!」
はぁ…この娘は僕の目の届く場所にずっと置いておかなくちゃ、やっぱり駄目かな。
「ねぇ。気持ち良かったの?みんなが揉みほぐしてくれて。」
あんな声出してたんだから気持ち良かったのは分かってるけど、僕の想像通りの返答が返って来ちゃったら……もうお仕置きしなきゃ、だよね。
「あ、はい!皆さんとっても上手で凄く気持ち良かったです。」
僕は一瞬クラッとした。
僕が想像してた以上の返答……上手で?凄く?
「あはは。そうなんだ。……じゃあ、始めようか?」
ニヤッと口角を上げた僕の顔を、君は首を傾げて見つめてくる。
先ずはそんな君の唇を僕の唇で塞ぎながらーーーー続きを考えようかな。
どんなお仕置きがいいのか…ね。
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