特別企画作品

□久々の欲望
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今日は久々の非番だが、空模様も怪しいし出掛けるのは止めにして、俺は自室の片付けをしていた。

いらねぇって言っても無理やり置いていった新八の春画の本が部屋の隅に山になっている。


「まずはこれを新八に返しにいくか。」


俺はその山を手にして部屋を後にした。


新八の部屋に向かう途中、前を歩くアイツに気付いていつものように声をかけちまう。

自分が春画の山を手にしているのを忘れて…。


「あ!原田さん。わ…凄い本の山ですね。原田さんどんな本読むんですか?」


そう言いながら俺の前で背伸びをして本の天辺を覗こうとしているが、到底見えないらしい。

不味いな…こいつには見せたくねぇんだよな。こんな物は。


「新八が置いていった本なんだけどよ。俺には必要ねぇから返しに行くとこなんだ。お前はどっか出掛けるのか?」


そう言って話を逸らそうとしたが…。


「土方さんに伝達を頼まれて、ちょっと町まで行くところです。永倉さんのお部屋までお手伝いしましょうか?」


それは無理だ。


「いや、ありがとよ。大して重くもねぇから大丈夫だ。雨も降りそうだし気をつけて行ってこいよ。傘、持ってった方がいいんじゃねぇか?」


俺がそう言うと、一瞬う〜んと考え込んでから空を見上げ、そして俺に笑顔を向けた。


「大丈夫です。走って行きますから。じゃあ、行ってきます。」


「ああ。じゃあな。転ぶなよ。」


俺に頭を下げそのまま走り出したお前を見送ってから、俺は新八の部屋に向かった。

新八は巡察中で部屋には誰も居ない。
敷きっぱなしの布団の奥に、俺は持ってきた本の山をドサッと置いて一息つくと…。


ん?


その布団の枕元に一枚の春画があり、その絵に俺の目は釘付けになっちまった。


アイツに似てる…。


俺は咄嗟にその春画を手に取り、くるくる丸めて懐へとしまいこんで新八の部屋を後にし、自室へと戻った。

そして俺は懐からさっきの春画を取り出した。


蔵の中で絡み合う男女の姿。

こんな物見なくても俺は何時でも生身の女を抱ける…だが最近はそんな気も湧かずにいた。

それもアイツの事を女だと意識し出してからだ。


「原田、居るか?」


ぼーっとそんな事を考えていると、廊下から土方さんに声を掛けられた。

俺は慌てて立ち上がり障子を開けた。


「アイツをちょっと遣いに行かせたんだが、結構降ってきちまったから迎えに行ってやってくんねぇか。」


土方さんにそう言われて初めて雨が降っている事に気付いた。


「ああ。分かった。で、何処に行ったんだ?」


土方さんに店を教えてもらい、俺は急ぎ足で店へと向かった。
そして向かう途中に木の下で雨宿りしているお前を見つけた。


「ビショビショじゃねぇか。言ったろ?傘持ってった方がいいって。」


濡れている自分の身体を抱き締めながら、お前は下を向いて頷いていた。


「このままじゃ風邪引いちまう。ちょっと待ってろ。」


俺は持ってきた傘を渡して辺りで雨風を凌げそうな場所を探した。

そうだ!
以前巡察で見つけた使われていない蔵が近くにあった筈だ。

俺は急いで戻り、こいつの手を引いてその蔵へと向かった。


「濡れてるもん、脱いどけ。少しでも乾かしといた方がいいぜ。…心配すんな。ここは使われてないから誰も来ねぇよ。」


そう言ってもなかなか脱ごうとしないお前だったが、俺が背中を向け自分のもんを脱ぎ出すと、後ろからゴソゴソと脱いでいる音が聞こえてきた。


脱いだはいいが…どーすっかな…。


このままじゃ二人で風邪引いちまうしな。


「あ、あの…原田さん。わ…私…寒くて…。」


振り向くと何も纏っていないお前が震えながら自分の身体を抱き締めていた。


咄嗟に手を伸ばしお前を俺の身体で包み込むと、一瞬強張った身体から力を抜いて、お前は俺の身体にぴったりとくっついてくる。


「あったかい…。」


そう一言だけ発したお前は、それからずっと黙ったままだった。


暫く黙ったままだったお前が、やっと口を開いた。


「そういえば、さっき原田さんが持っていた本。自分には必要ないって言ってましたけど…どんな本なんですか?」


!!!


俺は一瞬にしてさっきの春画が脳裏に蘇った。


「気になるか?」


俺の腕の中にいるお前を上から覗くと、少し潤んだ目で「はい」と無邪気に答えるお前に、俺は自分の顔を近づけお前の唇に自分の唇を重ねた。


ん…と一瞬苦しそうな声を出したお前だったが、俺が舌を絡ませれば応えるように自分の舌を絡ませ…俺の背中に腕を回してきた。

こうなっちまったら…もう途中で止める事なんて出来ねぇ。


「さっきの本は…こーゆー男女の絡み合う絵が描かれてたもんだ…どんな絵だったか…今から教えてやるよ。」


口付けをしながらお前にそう伝えると、お前の見開かれた目がゆっくりと閉じていく。


いいって事…だよな?


久しぶりに湧いた俺の欲望を、お前にたっぷり受け止めてもらうとするか。

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