僕と君との過負荷な日々。
□第-1箱『本当に心が痛むよ』
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もう一年生の二学期に入ったのに、入ろうと思える部活がない。
千衣の悩みは、そんな些細なものだった。
クラスの友人にその事を相談したところ、生徒会に行くことをすすめられたのだ。
正直、生徒会もそんなに暇じゃないよねとか、個人的な事を相談しに行っていいのかをものすごく悩みつつ生徒会室の前に行ったが、やはり最後の最後で諦めてしまった。
相談事なので、目安箱も使えない。
もう一回、改めて行くにしても、球磨川禊に会いたくない。
ーー昨日も思ったけど、個人的な事はやっぱり自分で解決しろってことなんですよね。これは。
そんな事を考えながら、千衣は学校へと向かった。
何事もなく、自分のクラス、1-Aの教室に着き、椅子に座る。
「おっ、藤野!おはよう」
「あ、おはよー」
人吉が 千衣に挨拶をする。
ーー人吉くんも生徒会か。あの球磨川禊と仕事をしてるのか……。
挨拶を返した後、千衣はそんなことを考えていた。
「藤野?なんかぼーっとしてるけど大丈夫か?」
考えこんでいる様子の千衣を心配して、人吉はそう声をかける。
「えっ、あっ、いや、大丈夫だよ!ちょっと魂が抜けてただけですよー」
「魂ってお前…
考え事とかじゃなくてか?」
「まぁ、魂が思考の世界に旅立ったとも言いかえられますよね」
「なんだよお前、それってつまり考え事してたってことじゃんかよ!
ま、もし何か悩みとかあるんだったら、生徒会に相談してくれよ!
俺達でズバッと解決してやるから!365日、俺達はどんな相談でも受け付ける!ま、めだかちゃんの受け売りだけどなー」
ーーありがとう人吉くん。それを昨日言って欲しかったです。生徒会には球磨川禊さんという今一番会いたくない人がいて以下略。
「んーん、なんかもうふっ切れてきたから大丈夫です!ありがとね!」
「藤野が良いなら良いんだけどな……無理すんなよ?」
「大丈夫大丈夫!」
千衣は、人吉の文字通りの人の良さをしみじみと感じていた。どこかのスカートめくり狂とは大違いである。
人吉との会話が一段落した時、 千衣は廊下が妙に騒がしくなっている事に気がついた。
「なんだか外がうるさいね。何かあったのかな?」
「めだかちゃんが超人技でも披露してんじゃないのか?」
「そんなの、日常すぎてみんなびっくりなんてしないよ」
「そりゃそーだ。…それじゃ、一体なんなんだろうな?」
人吉がその言葉を言い終わるのとほぼ同時に、教室の前のドアが開いた。
「『ぴんぽんぱんぽーん。迷子のお知らせですー。藤野千衣さん、藤野千衣さんはいらっしゃいますかー?』」
騒ぎの原因が、そこに立っていた。