-バクマツ-

□甘いもの
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「斎藤さん、一緒にお茶しませんか?」

稽古が終わり巡察もないので自室に戻ろうとしていたところを引きとめられた。
この男所帯に響く女性の声はただ一人。

「あのっ…お忙しいならいいんですけど…。」

「いや、そうではない。」

自分が振り向きもしないで思考に浸っていたため勘違いさせてしまったらしい。
さっと振り向くとおぼんを手にした千鶴が、立っていた。
おぼんの上には湯気が立っている暖かそうなお茶と小さな包みが一つ。

「他の者はどうした?」

「いえっ、これは斎藤さんに食べてもらおうと思って。」

会話的には自分に気でもあるのではないかと疑ってしまうが、多分千鶴ならあり得ない。
千鶴にその気がない事は、新選組幹部は嫌でも学習済みだ。

縁側に座るとちょこんと千鶴も隣りに座った。
見た目は男かもしれないが、こうやって注意深く見てみると仕草が女そのものだ。

「あの…なにか?」

「いや、すまん。」

注意深く見るというのは女にはあまりやっていけない事だ。
男所帯で花がないものだからこういう気遣いも忘れがちになる。
左之は、そんなことないかもしれないが。

「近藤さんに頂いたのですが、私一人で食べるのはもったいないと思って。」

そういって小さな包みを開く千鶴。
中には金平糖が入っていた。

「…金平糖なら日持ちするのではないか?」

「そんなんですけど、上等なもののようなので…。」

そんな事千鶴が気にする必要はないのだが。
近藤さんがあげたという事は、下心など全くないのだろう。
これが、左之だったり総司だったりすると後々面倒になる。

「なんで俺なんだ?」

「斎藤さん、甘い物お好きですよね。おいしいと言って食べてくれる人の方がいいような気がしますし。…迷惑でしたか?」

はなから迷惑ではないのだが…。
下から不安そうにのぞきこんでくる顔にさすがの斎藤も頬が火照るのを感じる。

「斎藤さん?」

「たっ…食べたらどうだ。」

お茶を取るふりをしながら千鶴から顔をそむける。
千鶴は、包みの中から桃色をした金平糖を取り出した。
それを、ほいっと口へ放り込む。

「……あまぁ〜い❤」

「………。」

千鶴の表情は、本当に幸せそうで。
斎藤は思ってしまった。
金平糖より千鶴を食べたいと…。

『千鶴は、金平糖よりなによりも甘そうだな。』

今日ばかりは、総司の気持ちが分からなくもない斎藤であった。


END


斎藤さん初書きっ!
なかなかネタが思い浮かばなかったので、相手がだれでも通用しそうなネタを…。
斎藤さんの場合は、このまま千鶴を食べるのを必死で我慢しそうです。
沖田なら食べちゃうでしょうが^^;


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