黒バス


□うさぎりんご
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「負けないから」

「そりゃこっちの台詞だ」


今の状況を簡単に説明すると、選抜リレーの真っ最中。

俺も日向もリレーのアンカーで、バトンが回ってくるのを待ってるところ。


俺は青組で、日向は黄組。

たしか、黒子達は赤組だった気がする。

まぁ、今の状況に関係ないけど。



「俺が勝ったらダジャレ飽きるまでずっと聞いててもらうから」


「だあほ。負けるつもりねえから」


「そんなの俺だってないし」



そう。

俺と日向は賭けている。


リレーで青組が勝ったら日向が俺の言うことを一個聞く。

黄組が勝ったら逆に俺が日向の言うことを聞かなくちゃならない。


この勝負、絶対に負けたくない。


「俺が勝ったら、オマエからのキスな。満足するまで」


…絶対に負けられない!


「日向…えろ」


「何想像してんだよ!?キスだけだっての!」


「どーせそれだけじゃ止まんないくせに…」


「…止まんなくてもいいのか?」


「絶対ヤダ!」



俺の貞操を守るためにもこの勝負、絶対勝たないと…!

…もう、奪われてるけどさ。



そうこうしてるうちに、そろそろ俺らまでバトンが回ってきそうだ。


青組は…、

げ、二位じゃん…


一位は黄組だし…!



差は少しと言えど、負けてるのは辛い。

負けたら何されるかわかんないし…!



「はいっ!」

「伊月っ!」



バトンが回ってきた。

俺の前のが頑張ってくれたおかげか、差が縮まっていた。


日向との差は体一個ぶん。



「…絶対抜く!」

「抜かせねえよ!」



足なら俺のが速い。

日向も速いけど、抜かせないほどではない。



…よっし!


体一個ぶんの差は徐々に無くなって、俺と日向は体を並べた。
カーブを走り終わり、残るは短い直線だけ。


抜ける…!


ゴールまであと10メートルと言うとき、俺が日向をほんの少し抜いた。



「伊月、愛してる」


「へぁ!?ば…!」


「よっしゃ!勝った!」



…あ。

日向にいきなり…、あ、愛してるって言われて驚いて力が抜けた瞬間に抜かれた。

距離が短かったから、その前勝負が決まってしまった。



「日向ずるい!」


「勝ちゃあいいんだよ」



「ダメ!反則負け!」


「そんな反則ねえよ!負けたの認めろって」



…だって。

途中まで勝ってたのに…!
納得いかない!




『一位、黄組―――』



「ほら、な?」

「っ!」



結果報告のアナウンスが流れてきた。

ずるい、けどアナウンスが流れてしまったら、今更結果は変えられない。


そもそも、日向の妨害攻撃(愛してるって言われた)を訴えても、笑って流されるか引かれるかのどっちかだろーなー…。



「ほら、伊月いくぞ」


「へ?どこに?」


「人気ないとこ。それとも、ココで言うこと聞いてもらうか?」


にやりと日向が笑う。

う…。


日向のお願いはキスだっけ…。

こんな皆いっぱいいるところでできるわけがない!


「ムリ!行こ!」


「校舎裏でいいか」



なんか、「行こ」って自分から誘ってるみたいになっちゃった…!

そんな気は全然ないから!


しかも校舎裏って…



響きがえろいんだけど…!

逃げたいなー。
逃げちゃおかなー。
…日向に殺されるなー。


……諦めよ。

軽く唇触れればキスだし、ほっぺでもキスはキス!


なんとかなる…よね?




「ついたぞ」


いつの間にかついてた。人気は思いどうり全然なかった。

心の準備はできたようでできてないかも…。


とりあえずちょっとタンマ!



「伊月、ちゃんとしたキスな」


ちゃんとしたキスってなに!?

どっからがちゃんとしたキスなの!?


ああ…ダメだ……。

頭がテンパってきた…。



「内科に行かないか(内科)!」


「テメエ…ダジャレはいらねえっつの!」



キタコレ!って思ったのに、日向はお気にめさなかったらしい。

でも、とっさに思いついたにはよくない?

さすが俺。



「ほら、伊月早くしろって」


人来るぞ。と言われたら、やるしかない。



少しだけだからっ…!




…ちゅっ



小さな可愛いリップ音がして、伊月は日向にキスをした。

本当に、触れるだけの。



「…これだけ?」


「う、うん」



ちゃんとキスしたじゃん…!

顔から火がでそう…!!


「まあいいか…。後でキスの仕方、しっかり教えてやるよ」



え…!?


「教えなくていい…!」



教えるなんていっても、どうせ違う方向にいくじゃん…!



「つか、ヤバくね?表彰式始まってんだけど」


「ヤバいよ!早くもどろ!」




俺らはダッシュで戻ったけど、間に合わなかった。




キスの練習が行われたかは、また別の話し。





(もう絶対日向と賭けたりしないからっ…!)



伊月の決意は固かった。




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