黒バス


□フルーツポンチ
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「伊月は?」


おかしい。

何がおかしいって?


いつもはオレより早く部活に来ている伊月が、今日はまだ来ていないのがおかしい。

委員会は無かったはずだし、用事があるなら連絡があるはずだ。


俺はとりあえず、カントクに伊月の行方を聞いてみた。


「伊月君?知らないわよ?」


確かに来てないわね…とカントクが呟く。

カントクも知らないらしい。


何かあったんだろうか?
おかしいと言う疑問が、心配と言う感情に変わった。



まさか…何かあったんじゃ?



不安で気持ちがいっぱいになる。
こうなってしまったら、部活なんて手に付かない。


何故俺は伊月をこんなに心配しているのだろう?

別に付き合ってる訳でもない。その前に伊月は男だ、恋愛感情を持つ訳が無い。

男が男を好きになる訳がないと俺は考えるのを止めた。


「………?」


一瞬胸が痛くなった。
伊月を思って?
いや、無いだろ…
そんなの伊月に恋してる見たいじゃねぇか……。


そんなことを考えていたら、また胸が痛くなった。

そして伊月を心配してしまう。



(んだよ……)


何で胸が痛くなる?
何で胸が苦しくなる?
男を思って、伊月を思って?


オレはどうかしたんだろうか?



「伊月君…本当にどうしたのかしら?日向君、探しに行ってくれる?」



カントクがいきなり話し掛けてきて少し驚いたが、オレは「あぁ」と生返事を返して伊月を探しに向かった。




体育館を出るまではゆっくりと歩いていたが、体育館を出た瞬間オレは自然と走りだした。


「どこ居んだよ…」


伊月が居そうな所を頭に浮かべる。


体育館以外には…教室?
それとも屋上?

無難な所しか思いつかなかったが、とにかく向かって見ようとオレはまず教室を目指した。





―――――



「いねぇ…」


はぁ…とため息を漏らす。

だって仕方ねぇだろ?


教室にも屋上にも居なかったんだからさ?
しかも全力疾走だぜ?

ため息がでても仕方ないだろ。


さて困った。

伊月の居場所の見当もつかねぇ。
自分の貧困な想像力に泣けてくる。



「まじどこだよ…」



呼んだら出てこないだろうか?犬じゃ無いし無理か…と、すぐにあきらめた。

「…あ」



思いだした。

伊月の居そうな所。
居るなんて保障は無いけど、そこしか思いつか無いんだから仕方がない。


とりあえずオレはそこを目指した。

疲れるのも構わず、全力疾走で。





















「伊月…?」


あれから数分ぐらいでオレは目的地についた。

オレが思い着いた伊月の居場所は、音楽室。


何で音楽室かって?


そんなのオレも良くわかんねぇけど、気分的に居そうだったんだよ。

勘ってやつ?



とりあえずオレは伊月を探す。

全体を見回して見るがそれらしい人影は見当たらない。

奥まで歩いたが伊月はいなかった。


諦めて音楽室を出ようとして出口に向かう。



「あ…」



いた。

伊月だ。


体育座りで顔を埋めている為か、オレには気づいていないようだ。


ゆっくりと近づく。

伊月に気づかれないように。


別に気づかれても良いけど、気づかれないほうが良いかなとか思いながら。


伊月の目の前まで来た。



「日、向…?」



「……っ!?」



伊月が顔を上げてオレの名前を呼んだ。

それだけなら良い。


だけどオレは伊月の顔を見て驚いてしまった。
きっと、眉間にシワが寄っているだろう。



「…んで、泣いてんだよ」



伊月は泣いていた。

目を真っ赤にして、涙をこぼしていた。


なんで泣いてんだよ?
今さら隠したって無駄じゃね?

伊月は「あ…」と、涙を拭う。


「泣いて、ない」



嘘つけ。

隠せる訳ねぇだろ。
つか、何で隠すんだよ?



「嘘つけ、泣いてんだろ」



何でだよ?とオレは付け加える。
すると伊月はまた涙を零した。


「……引かれるから」



やだ、と言う。

引かれるから嫌だ?
何年一緒に居るんだよ馬鹿。

オレが金髪にした時もお前は引いては無かったじゃねえか。
笑われたし、ダサいとは言われたけどな。



「引かねぇよ」



これはオレの本心。
どうせ、いつものダジャレよりマシなんだろ?

だったら引かねぇよ。
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