サブウェイマスター 学パロ

□どうして泣いてるの
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掃除当番のごみ捨ては、
当番式にしたらいいと思う。

と、まぁ、じゃんけんに負けた自分にいら立ちを覚えながら、
ゴミ箱を抱えてゴミ捨て場まで向かう。


これが終わったら、図書室にでも行きましょうか。
どうせ、暇ですし。
クダリは、補修か何かでしたっけ。


「…あ」


角を曲がった所、
桜の木の下にうずくまる影。


…不審者?


ゴミ箱を抱え直して、
足音を消して、影に近付く。


…と、それが勢いよく振り返った。


「え」

「…あ」


なぎささんです。

大粒の涙を頬に伝わせて、
きょとんと、大きく目を見開いて、
こちらを見上げています。


「どうしたんですか」

「……」


ふいっと顔を背けられ、
内心傷ついていると、彼女は手を合わせ始めた。

桜の木にお願い事?

そう思って、彼女の前を覗き込むと、
こんもりとした土があった。


あぁ、そうか。



「…なぎささん」

「……」


ゴミ箱を傍らに置いて、
ハンカチで手を拭いて、彼女の頭を失礼ながらも撫でた。


「あなたは優しすぎます」

「…」

「きっと幸せでした」

「…っ」

「なぎささんに祈ってもらえて」

「…っふぇ」


制服の袖で乱暴に、
目元を拭う彼女の腕をやんわり掴む。

傍にしゃがんで、代わりに指で拭う。


「幸せです。
 あなたが、惜しんでくれましたから」

「…っぁ、あのね、この子…っ」



小さな子猫だったらしい。

ここで、みぃみぃ鳴いていたから、
たまに様子を見に来ていた。

学校帰りに何となく車道を見てみると、
その子猫が血まみれで、倒れているじゃないか。

慌ててその子をカーディガンでくるんで、抱えて、
学校に戻って、安否を確認したけれど、
もう固くなっていて、冷たかった。


「…か、かわいかった、の。
 みぃって、鳴いて、甘えて、くれた事も
 あって、まだ生きれるのに、
 まだ、これ、からなの、に」


あぁ、この子はなんて。


「死んじゃった……。
 ひとり、って知って、たの、に
 なに、も…」


しなかった、できたのに。


彼女は私の胸に飛び込んで、泣いた。

そんなの、ただの捨て猫かもしれない。
親猫からはぐれた、ただの野良猫。

それなのに、この子は。



「大丈夫です。
 あなたにこんなにも想われた。
 幸せだった。絶対に」


大丈夫、大丈夫ですよ。
幸せでした、きっと、だからほら、
もう一度、祈ってあげましょう?


背中をトントンと優しく叩いていると、
彼女は、もう一度向き合って、手を合わせた。

私も手を合わせて、
子猫のこれからの幸せを願う。



「…さて、明日お花、持ってきますね。
 お供えも持って来ましょうか」

「…うん、一緒に行く」

「買いに行きますか?」

「行く」


いつもよりかなりの短文で話す彼女は、
私の傍らにあったゴミ箱を持って、


「とりあえずは、ゴミ」


と、真っ赤になった目と鼻で微笑んだ。


「はい」


片方ずつ持って、ふたりで歩く。


「また明日」


振り返って、子猫のお墓を見る彼女は、
慈愛に満ちていた。



END



……シリアス?
シリアスだよね。
なぎさの深い優しさに気付くって、話。


では、
読んでくださったかた、
ありがとうございましたー(^^)/

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