サブウェイマスター 3

□君の記憶 1
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丁寧な言葉を使う人でした。

優しい目で私を見る人でした。

繋ぐ手は暖かい人でした。

でも、その人は今…―――――――










「…どこにいるの?」


「え?」



白い天井、白いベッド、白い床。
枠どられた景色、窓の外。

鼻を突く、独特なにおい。


…どこ?


ここは、なに?

あなたはどこにいる?



「…ね、あなた、知らない?」

「え? え?」

「私の大好きな人。手が暖かいの。
 丁寧な言葉を使うの。
 優しい目で私を…」


みるの。

でも、どこにいるの?


「…なぎさ様?」

「あの人はどこ?」


寂しい。

寂しい。

ねぇ、どこ?

目の前の人は誰?


「なぎさ様、私でございます。
 ノボリでございます」

「…のぼ、り?」

「ええ。
 ……覚えて、いませんか?」



記憶をたどる。

でも、そんな名前、知らない。



「……だれ?」



知らない。

でも、あなたが
すごく傷ついた顔をしたのは、わかった。








医師によると、私は記憶喪失らしい。

でもそれは突発的なものであり、
2,3日もすれば元に戻るとのこと。



「その間、僕達が面倒、みるからね」


にっこり笑う特徴的なもみあげの人。


「…はい」

「…なぎさ、あのね、
 今までの事、一応教えておくね」


「はい」



後ろにはこの間、ノボリと名乗った人が、
壁に背を預けて、立っていた。



「僕は、クダリ。
 ノボリの双子の弟」

「…はい」

「サブウェイマスターをしてる。
 ポケモンバトル、わかる?」


こくん、と頷く。


「…地下に僕らはいるから、
 君もよくそこにきていた」

「…はい」

「その日は雨で、水が入り込んでいたんだ。
 そこで君は転んだ。
 そして、頭を打ったんだ」

「あ、それで記憶喪失ですか?」

「うん」


ぽんぽんっと包帯の巻かれた頭を
優しく撫でられる。


「君は今、記憶を失っている。
 でも君は覚えてる事、ひとつあるね?」

「…はい」

「それはなに?」


「……愛しい、大好きな人、が、いました」


でも顔を思い出せない。
完成していたパズルが崩れたみたいに、
かなり断片的な感じでしか思い出せない。




「それは大丈夫。
 絶対に思いだせるから、ね?」

「はい」

「不安かもしれないけれど、
 大丈夫だから。
 僕達、ノボリもクダリも、
 仕事休んで君の傍にいるから」

「……」


その時、壁側にいたノボリさんがこちらに歩み寄ってきた。

そして私の手を握って、その手を額にあてた。



「大丈夫です、私はあなたを守ります。
 心配なんてしなくていい。
 ちゃんと傍にいる。
 だから」


顔を上げて、私の頬に手を当てて、
親指で目の下を拭った。


「不安な気持ちをさらけ出して、
 泣いてしまいなさい」

「…え」

「泣けばいいのです。
 なぜ泣いているかわからなくなるくらい。
 そしてすっきりしたら、家へ帰りましょう」


ね?と微笑むノボリさんに、
私は気が緩んだのか、ボロボロと大粒の涙を零した。



「大丈夫ですよ」



ぎゅっと抱きしめてくれる。
その暖かさを、なんだか覚えているような気がした。







続く。



…続きます。
ごめんなさい、深音様。
なんだかおさまりませんでした…。

あと二回だと思います…!!
待っていてもらえると助かります!!

本当にすみません!!


では、
読んでくださった方、
ありがとうございました(*^_^*)

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