ドラマチック・シティ
□【ブラック・ワン】Who’s Next?
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――クーロンタウンは眠らない。
使い古された言葉だが、けばけばしいネオンを見る度にどうしても思い出す。
光あるところに闇はあるというが、なるほど、この街はメガロポリス最大の歓楽都市であり――
最悪の犯罪都市だ。
*
振り向き様に拳が視界に入った。
俺は酔っ払いの温い右ストレートを避け、ソイツの鳩尾に素早くパンチを叩き込む。
うずくまり、安酒を戻した男“達”を一瞥し、運動後の一服をする。
クーロン・タウンのスーパーヒーロー、ブラック・ワンが姿を消してから、小さな犯罪が爆発的に増えた。
そして、以前、あれほど法を超越した自警者を叩いたメディアには待望論が出る。
――全くクソッタレな話だな。
ブラック・ワンなき後のクーロン・シティが犯罪者に困らないのと同様、ヒーローにも困っていないのは事実だ。
違法ドラッグによって突然変異(ミューテーション)した伸縮自在の爪で犯罪者を見るも無惨に切り裂く、ミセリコルデの名をよく聞くようになったし、ワンの相棒(サイドキック)、ブラック・キッドとして活躍し、今はナイトレイと名乗る奴もいる。
だが、危険だ。
ヴィランもヒーローも今がチャンスとばかりに動き始めている今こそ。
そして、先週、正体不明のハッカー、格付け狂ことランク・ドランクンが次のスーパーヒーロー候補のランキングを公表したのがついに引き金となった。
不意に酔っ払いの1人が立ち上がる。
懐からナイフを取りだし、奇声とともに突っ込んでくる。
俺はライターを取り出し、
点火。
小さな炎は意志を持つかのように真っ直ぐにライターから一筋の赤い線を残したまま、ナイフに向かい、一瞬にして溶かしてみせる。
俺は動きの止まった男をぶん殴るだけでいい。
「…ち、畜生、“クレイジー”ジョーが…!」
男は俺の蔑称を吐き捨てながら、意識を失う。
俺がクレイジー?
俺は法を守って悪党どもと戦っているのだ。そういう意味では少なくとも巷のヒーロー達よりはクレイジーじゃない。
そう、俺の仕事は警察官だ。