rkrnお題

□共にいても何処にいても
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滝視点。
年齢操作
6年生、学園を去る日

――――





まだ寒い季節
外ではまだ雪が降っている。
しかし私達はここを出て行く。
ぼんやりと部屋を見渡す。
大きなものは置いてゆく、邪魔でしかないのだ。




「おい、用意できたか?喜八郎」


「滝…」




喜八郎がぼんやりと私をみる。
その表現は何時も通り無表情で、でもどこか悲しげで。




「喜八郎、何、辛気臭い顔してるんだ」


「別に…辛気臭い顔とかしてないし…」


「嘘付け、全くお前は」




にやりと笑い近付く。
喜八郎は相も変わらず私を見つめている。



ふっと息を吐き、そっと喜八郎を抱き締めトントンと身体を叩いてやる。
すると喜八郎は私にしがみつき頭をグリグリとすり付けてくるのだ。



六年共にいてなれてしまった、喜八郎の精一杯の行動、
悲しい、寂しいという感情。
一緒がいい、一緒にいてという可愛い我が儘。




「喜八郎、何を怖がる事がある?」




あぁ、喜八郎、こうは言っても私も物凄く恐いのだ。




六年前は、五年間は立派な忍に、城仕えになろうと。
大切なものなど私一人で十分、早く卒業したいなどと思っていた。


しかし五年生になってからはどうだ。一年というものが凄く短く、虚無感に襲われた。
この学園を去りたくはないと
同じ時を過ごした仲間とともにずっと…これからも…




「私は…ずっと三木やタカ丸さんと…ずっと滝といたかったよ」
「凄く辛いんだ」
「痛くて、でもぽっかり心に穴が空いたみたい。」




ぎゅうぎゅうしめつける喜八郎の腕。
まるで幼子が母を求めているような。




「あほ八郎。私だってそうだ。今になって気がつく。どれほど愛おしい時だったか、この六年間」
「お前が傍にいる事、普通だと思っていた。」
「私がいて喜八郎がいて三木がいてたか丸さんがいて。」




ずっと馬鹿やって、喧嘩して、笑って泣いてそれからそれから…




……ありがとう、今まで。





「だからこの瞬間を胸に刻み私は去ろう」





思い出なんぞは心の奥底に押しやって

私とお前、いまこの瞬間だけで良い。


この瞬間さえあれば私は笑ってこの学園から出てゆけるだろう。




だからお前も






私は
 共にいても何処にいても

       お前の側にあるのだから。








ありがとう、我が友、我が誇り


会える日が来るかは定かではない





会えたとしても


敵かもしれない。


味方かもしれない。


もしかしたら生涯会えないかもしれない






しかし、「友」として逢える日が来たならば。




またくだらない事で笑い合おうではないか





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