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□気付けば昨日は幸せの道
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綾視点




五年になってもう半年も過ぎた頃。
私と滝は共に同じ任務についていた。


私達以外のメンバーはい組の者。仲が良いというわけでもなく悪すぎると言うわけでもなく…。


と思っているのは私だけかもしれない。


実際は滝とそいつ等はギスギスしているのだから。
しかし任務であるのでそうも言っていられない。
さっさと穏便に終わらせて、帰って滝とゆっくりしたい。


その想いを抱き、作戦通りに密書を回収する。
実に簡単だった。これで滝とのんびりできる。
滝もそう思っていたんだろう。私達は口布の下で微笑みあった。




しかしその気のゆるみがいけなかったのだ。




滝の後ろに忍ぶ影。
気がついた時には密書を仲間に押し付け走っていた。



「滝っ!!!!!」



普段は出さない大声で叫び、手を伸ばす。
赤い液体が散った。





―――――




それが昨日の話し。
数刻前に眼が覚めた私はぼんやりとすぐ側に眠る滝の顔を見つめていた。

右手を持ち上げソッと頭をなでる。


「ん…」


それがくすぐったかったのか、もぞりと覚醒し、パチリと眼があった。


「き、喜八郎!!お、おき…!!!」

「滝、おはよ。」


いいながら身体を起こす。
私の挨拶に気が抜けたのか、一瞬呆れた顔になるも、涙腺が崩壊したのか、ぶわりと滝の眼から涙が溢れる。


私が驚いている間にも涙は止まる事はなく、それどころか、顔をグシャグシャに歪ませて滝は私を強く抱き締めた。


私も抱き締めたかったが、右手しか力の入らない私の手では強く抱き締める事が出来ない。


「喜八郎…きは、喜八郎喜八郎喜八郎…喜八郎…っ…喜八郎喜八郎喜八郎喜八郎…喜八郎喜八郎っ…喜八郎」





私を庇ったばっかりに

ごめんな、本当にごめん

お前の大切な手を

学園一のトラパーの手を

大切な友の手を

ごめん、ごめん、喜八郎







滝は狂ったように私の名を呼び謝罪を続ける。
そしてこう言うのだ。



「もう私から離れるな。お前は私が守る。誰にも傷つけさせない。喜八郎、お前は私のモノだ。」



ギリギリと滝の腕が私を締め付ける。


そしてその様子で私は気がつく。
なんと悲しい事になってしまったのか。
滝は壊れてしまった。
心地の良い私達の距離もまた。


しかし


私はそれで良いと思うのだ。
他の者は不幸な事だと嘆くだろう。
しかし私にとっては、
滝と私にとっては、



気付けば昨日は幸せ



腕を代償に君の人生を手に入れた


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