ミ☆゚*:Novel:*゚☆彡

□泡沫LoVERs〜はじまり〜
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「性別なんて、関係ないっしょ?オレはユウが、好きなんだから」「な…!」

 まったく訳がわからない。そりゃ、自分だってラビのことは好きだ。けれどそれは、あくまでも友人としてであって、そういう意味ではないはずだ。なのにこの男ときたら、彼女になれと、好きなんだと言ってくる。

「オレね、ずっと好きだったんさ。はじめてユウに逢った時から。勿論、恋愛感情としてのね」

 何というカミングアウトをしているんだ、と叫びたいのを何とか堪えたものの、神田は動揺と困惑よりもはるかに強く、歓びを感じていた。

「ねぇ、ユウは?…ユウはオレのこと…好きじゃないさ?」

 俯く面を上げさせようと頤に触れた指先に、びくり、と大袈裟なくらい肩が揺れたがラビはそれを気にすることもなく、包み込むように両頬に掌を添えた。

「ユウ…ほら、顔、あげて?」
「…っ、」
「ごめんね。本当は言うつもり、なかったんさ。でも…もう抑えてらんないんさ。自分の気持ちに蓋して知らないふりなんて、出来ないんさ。ごめんね……ユウ」
「……るな…、謝るな!」
「ユウ?!」

 あまりに何度も謝るものだから、何だかこちらが悪いような気がしてきて、気付いたら怒鳴っていた。そんな神田に些か驚くラビだったが、謝るくらいならはじめから言うなと言ってやれば、困ったような笑みを浮かべたのが見なくともわかる気がした。

「うん、ごめん。そうさね。…好き、大好きさ、ユウ」
「っ、」

 そうしてふわり、と温かい腕にきつく抱き締められ、神田はなぜだかとても泣きたくなった。否、正確には雫はもう、今にも溢れ出しそうだった。

「ど…うか、してる。こんな……嬉しいなんて、どうかしてる!」「ユウ…」

 同性であるラビに好きだと告げられ嬉しいだなんて、自分はどうかしているのだと叫ぶ神田に、しかしラビはとても嬉しそうに甘く神田の名を囁いた。

「ね、ユウ。もう頑張りすぎなくっていいんさ。…それでも頑張って疲れたらさ、ここにおいで。そんでいつでも羽根を休めたらいいさ」

 なんて甘い誘惑!そして、なんて残酷な宣告。
 虚勢と虚飾で身を固めた神田にとって、これは赦しであり警告であった。
 頑張り過ぎることはないのだと言われ安堵する反面、すべて脱ぎ捨ててまっさらのまま生きろと言われ、恐怖する自分とが居た。
 ラビは難しく考えるなというけれど、物心ついた頃からずっとこうして生きてきた神田にとって、今更それを突然変えることなど出来なかったし、有りのままの自分を曝け出してしまったらどうなるのか、予想もつかなかった。
 故に、その言葉を素直に受け入れることは出来なかった。

僅かに震える神田に気付いたのか、ラビは宥めるように頭部を撫でると、優しさの滲む声音で言った。

「ちょっとずつでいいんさ。ちょっとずつ、変えていこう?ユウがユウらしく、ありのままのユウで居られるように、オレも協力するからさ」
「……」
「だから、ね?オレの恋人になって」

 きつく回された腕の中で聞くその言葉は、神田に歓喜しか齎さなかった。
 肯定の代わりに首筋に腕を絡めれば、心底嬉しそうな、幸せそうな笑みを浮かべるものだから、つられて神田も笑みを浮かべる。



「愛してるさ、ユウ」



 それは、必然。
 二つの影は瞬く星々と月に見守られ、ゆっくりと重なり合った。

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