ミ☆゚*:Novel:*゚☆彡

□■□Sweet Dreams□■□
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 今年もまた、人肌が恋しくなるという正にその通りの季節がやって来た。
 教団の、見馴れたはずの自室ですら、この季節になると何だか少し、いつもより殺風景で寂しい感じがした。
 元々家具と呼べるものが無いに等しい室内では、割れたまま修理の施されない大きな窓から侵入する真冬の冷えた空気に因って、更に陰鬱で物哀しい印象を与えていた。
 けれどもこの部屋の主は、そんなことは微塵も気にしている様子も無く、窓の外にちらつく雪を静かに見詰めていた。
 そうしていること数十分、静寂だけが支配していた空間に、突如として喧騒が舞い降りた。
「ユウ!ちょって手ぇ塞がってるから、開けてさ!」
 そう言って木製の分厚い扉の向こうから、聞き慣れた声が響いた。
 神田は窓から離れると、要求通り扉を開けてやった。
 そこには、レトロな石油ストーブと折り畳み式の小さなテーブルを両腕に抱え、小脇には毛足の長いラグと膝掛け、クッションまでもを携えていた。
 その様子を見た神田は、毎年繰り返される溜め息と苦笑を漏らした。
「はぁ〜、疲れたさ〜。んでもまだ、持ってくる物があるんさ」
「まだあるのか?これ以上持ち込んで、どうする気だ」
 目の前に置かれた物の多さに、これ以上何を、と少々うんざりとした調子で言う神田に、ラビは宙を見上げながら思案の様子。
「えーっと、あとは〜…温かい飲み物と夜食でしょー?それから…」
「もういい。解った」
 まだまだ出てきそうな気配にげんなりとした神田は、ラビの言葉を途中で遮ると、持ち込まれた荷物を爪先で小突いた。
「そ?んじゃ、もうひとっ走り行ってくるさ!」
 満面の笑みを浮かべて踵を返そうとするラビに、神田は制止の声を掛ける。
「待て。そんなに色々持ってくるなら、お前一人じゃ無理だろう」
「え?ん〜…ま、二回往復すれば大丈夫さ☆」
 なんて、手伝ってくれとは一言も言わないラビに、こいつは何処まで馬鹿なんだ?などと思いつつ、そんなラビの無意識の優しさや愛情が、神田にとってはとても心地良かった。
「馬鹿兎。オレも行ってやるって言ってんだよ」
 そう教えてやれば、ラビは一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
 そんなラビの額を指先で弾くと、早くしろ、と言って部屋を後にした。


 日本で言うところの大晦日ということもあり、教団内もいつになく浮足立った様子で、行き交う団員たちはそれぞれに今年一年の働きを共に労い、明日への希望を語り合っていた。
 連れ立って歩く二人にも、というよりはラビに向けて、すれ違う団員たちが声を掛けて寄越していた。
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