○●夢●○

□お嫁さん。
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それは放課後に



カタカタカタ…。






私の胸に、心地よく刻まれた。
















お嫁さんに。
――――――――――――――――――












放課後に、数名の居残り者が集う家庭科室。


授業で間に合わなかったエプロン作りをしています。

はい、私も居残り組ですよ。




『くそー…こんなの買えばいいじゃんかー』


「喋ってる暇あったら作れよ」



隣で、生地を待ち針で止めている泉が話しかけてきた。

なにかとニコイチなクラスメイト。





『…へーへー、作りますよーだ』


とか言いつつやる気ゼロな私。

裁縫ってほんと苦手だ。
ズレるし、はみ出るし、ケガするし。




(ん…?)






『ちょいとお兄さん』



「な、なんだよ」



グイッと体勢を泉の方に寄せ、彼の作業を眺める。





『手際よくないですか?』


「…まあねー」


だってほら!!
ほぼ同じ作業を同時に始めてるのに私とのこの差!!

丁寧にフェルトペンで描かれたラインを、待ち針が抑えてゆく。




『なんでそんなに上手いのに居残りなわけ?』


「めんどーで後回ししてた」


『ふーん…羨ましい奴!』



泉ってほんと変わってる。





(…と、こんな事してたら帰れない!!)






切れないハサミで切ったかのようなガタガタの生地に、待ち針を止めていく。



(な、情けないな…女の子失格!?)





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