『泉って良いお嫁さんになれそうだよねー』 「……」 (あ、無視ですかコノヤロー) 『ほら、浜田くんとかのお嫁さんに』 「ケンカうってんのか」 『だってなんかさー…ッイタ!』 「!」 集中せずに作業をしていた罰だろうか。 指に針がチクリと刺さった。 「…見せて」 『…え。大した事ないって』 そう言ったが彼は強引に私の手を引いた。 「…お前ほんと下手くそだな」 『うっさい、萌え顔ー』 「は?なにそれ」 『な、なんでもありません』 「…ま、これくらいなら大丈夫だろ」 ようやく解放された私の左手は、ほんのり泉の温もりを覚えていた。 (…なんか男の子に心配されるのってイイね) カタカタカタ…カタカタカタ… (そうそう…心の中がカタカタカタって…) 『えぇぇ?!!』 「今度はなんだよ」 なんだよって… 『もうミシン縫い!?』 「周りを見ろ」 そう言われて辺りを見渡すと、ほとんどの生徒がミシン縫いの作業に入っていた。 『うそー?!…こうなったら最終手段しか…』 「……最終手段?」 『ボンドでごまかす!!』 「バカかお前は」 『じゃあ待ち針作業省いて今から強引に縫う』 「……」 あ、今明らかに泉のため息が聞こえた。 (ちくしょー、こっちも必死なんだよ) |