┗稲妻、ガッシュ

□今更の後悔
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朝が来て、学校へ行って、授業を受ける。

普段と、さして変わらない風景。

ただ1つ、違うとすれば…

チラリ、と横にいるアルベールを見る。

何時もなら目があって、ちゃんと授業を受けろだの何だの言ってくる筈が、
今では何処か焦点の合わない目でボーッと黒板を眺めている。

私は黒板へと視線を戻す。

が、気がつくと私の目に映るのは、アルベールの横顔。

つまり、私はアルベールのことばかり見てしまうのだ。

これではまるで恋する女子である。

………――恋する女子?

『嘘だぁぁぁ!!』

「何が嘘なんだ、星野」

『……………ぁ、なんでもありません、ハイ…。』

や、やってしまった。

授業中にも関わらず大声を出してしまった。

多分今私の顔はトマトのように真っ赤だろう。

途端にクラスメートの笑いの渦になる教室。

もちろん、笑うクラスメートの中には、ルイ君もいるわけで…。

「星野、とりあえず座れ。授業を続けるぞ、」

あぁ、恥ずかしい。

穴があったら入りたい、とは正にこの事だろう。

ねぇアルベール、恥ずかしいよ……と声をかけようとして、慌てて口を抑える。

私は今アルベールと絶賛ケンカ中なのだ。

しかも、私から言ってしまったのだ、「大嫌い」と。

本当はそんなこと思ってないのに。

が、私はアルベールを見て、思わず目を疑った。

いや、目どころか、体のありとあらゆる部位を疑った。

アルベールは、黒板を見ていたのだ。

あの焦点の合わない目で。

まるで、何事も無かったように…。

私がこんなことをしたら、馬鹿とか、日頃から五月蝿いからだとかイヤミを言ってくるのに…。

何も言わないどころか、興味すら示さないなんて有り得ない。

いくらケンカ中とはいえ、こっちを全く見ないのは異常だ。

―――…アルベール……。

『どうしちゃったんだろ…。』

私の呟いた言葉は、彼に届いたか分からない。


の後悔



((遅い、遅すぎるよ))

((ごめん、って一言言えたら、どんなに楽だろう))
          

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