紅の花舞
□一、 始まりの唄
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「!!!」
バシッ
手首を強く掴まれ、私の手にあった刀はからんとむなしい音をたてて床へと転がった。
「…ッ、離して!父様と母様のところへ行かせて!」
「命を無駄にしてはいけない!!」
ビクッ
それまで優しい声音をしていたその人の大きな声に、肩が震えた。
「…君は君を助けてくれたご両親のためにも、生きなければならない。」
…よく聞いて、奏樹。
あなたはその命を無駄にしてはいけないわ。その刀と共に私達の分まで、生きてちょうだい。
―どうして。
どうして母様と同じことをこの人は言ってくれるのだろう。
「…でも、私の居場所なんてもうどこにも…ッ」
「ここにいればいい。」
そっと顔を上げさせられると、そこにはとても優しい顔があった。
「私は近藤勇。君の名前は?」
「葉城…奏樹です。」
「では奏樹君。ここで、私達と一緒に暮らさないか?」
その声があまりにも優しくて
糸が切れたように、次から次へと涙が溢れてくる。
「う…っ、ひっく……よろしくお願いします…!」
優しく頭を撫でてくれたこの人に
私は一生ついていこうと誓った。
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