紅の花舞
□七、 零れ落ちる雫を拭って
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「…奏樹…ちゃん…。」
やっと僕が名前を呼ぶと、彼女はゆっくりとこちらを向いた。
その瞳から涙が零れたら、僕が拭ってあげよう。
―そう思っていたのに。
「…寝間着、駄目になっちゃった。これ結構気に入ってたんだけどなぁ。」
彼女は笑ったんだ。
困った様に辺りを見回して。
「おい!一体何があった!?」
慌てた様子で幹部の皆がやってきた。
「これは…!」
「…見ての通り、羅刹が侵入したんですよ。」
僕がそれだけ言うと、皆は何があったか理解したようだった。
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