紅の花舞
□九、 動き出す、時
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「…やっぱりここは、新選組の屯所なんですね。」
浅葱の羽織を纏い、京の治安を守っている人達の名は、江戸でも何度か聞いた事がある。
…まさか、こんな形で私が彼らと関わる事になるとは思わなかったけど。
「あぁ。実は今、幹部連中であんたの事を話し合っているんだ。ちょっと広間まで来てくれるかい?」
「は、はい…。」
私は二人の後について歩き出す。
(私、どうなってしまうのだろう。まだ父様の手がかりも掴めていないのに…。)
不安と恐怖で、唯一縛られたままの両手をぎゅっと握り締める。
すると、不意に紅の大きな瞳が私を覗き込んだ。
「大丈夫だよ。幹部って言っても、皆優しいから!」
そう言ってにっこり笑った葉城さん。
「…はい!」
その明るい笑顔に、私も少しだけ元気を分けてもらえた。
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