紅の花舞

□十五、知らないままでいい
3ページ/13ページ





「まあ左腕は使い物にならないそうですが、それも些細な問題ではないかしら?」


その発言に、場の空気は一変する。



「剣客としては生きていけずとも、お気になさることはありませんわ。
山南さんはその才覚と深慮で、新選組と私を充分に助けてくれそうですもの」



伊東さんの言葉は、人の心をえぐるものだ。


山南さんは、何も言わずに押し黙っていた。



腕の怪我にどれだけ彼が苦しんでいるか、それを知っている僕らは一挙に殺気立った。


「――伊東さん、今のはどういう意味だ」



土方さんの口調は強く、詰問に近いものだ。



「あんたの言うように、山南さんは優秀な論客だ。
…けどな。山南さんは剣客としても、この新選組に必要な人間なんだよ!」


土方さんは、やや声を荒げて言った。


でも……




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ