紅の花舞
□十五、知らないままでいい
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「まあ左腕は使い物にならないそうですが、それも些細な問題ではないかしら?」
その発言に、場の空気は一変する。
「剣客としては生きていけずとも、お気になさることはありませんわ。
山南さんはその才覚と深慮で、新選組と私を充分に助けてくれそうですもの」
伊東さんの言葉は、人の心をえぐるものだ。
山南さんは、何も言わずに押し黙っていた。
腕の怪我にどれだけ彼が苦しんでいるか、それを知っている僕らは一挙に殺気立った。
「――伊東さん、今のはどういう意味だ」
土方さんの口調は強く、詰問に近いものだ。
「あんたの言うように、山南さんは優秀な論客だ。
…けどな。山南さんは剣客としても、この新選組に必要な人間なんだよ!」
土方さんは、やや声を荒げて言った。
でも……