紅の花舞
□十六、狂気の欠片
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「まさか君に見つかるとはね。
正直、予想していませんでしたよ」
山南さんが手にしていたのは、硝子の小瓶。
中には、毒々しい真紅の液体が満ちている。
「山南さん…それ……!」
「あぁ、奏樹は実物を見るのは初めてかもしれませんね。
これは変若水の原液を、可能な限り薄めたものです」
今まで何度も聞いてきた薬の名前。
それが今山南さんの手にある。
「まさか…試すつもりなの……?」
私の問いに、山南さんは静かに微笑む。
「服用すれば私の腕も治ります。
薬の調合が成功さえしていれば、ね」
「でも、成功してなかったらどうするの!?
危険過ぎるよ!」
私が必死になって言うと、山南さんは険しい表情をした。