紅の花舞
□十六、狂気の欠片
6ページ/15ページ
私の首を掴んだのは、山南さんであって山南さんではなかった。
薄暗い闇の中で浮き上がる、変色した白い髪。
前髪の間からのぞく、狂気の瞳。
今の彼に理性はあるのだろうか。
私という存在を認識しているだろうか。
(でも…それでも……!)
私はぎりぎりと締め付けられる喉から、必死に声を漏らした。
「山…南さ……っ…!」
私の目から零れ落ちた涙が、頬を伝って彼の手へと落ちる。
――刹那、私の首を締め付ける動きが緩んだ。
→
次へ
←
前へ
[
戻る
]
[
TOPへ
]
[
しおり
]
カスタマイズ
©フォレストページ